◆オーストラリアン・ベースボールリーグ ブリスベン・バンディッツ1―13アデレード・ジャイアンツ(13日・ブリスベン)

 【ブリスベン(オーストラリア)13日=臼井恭香】オーストラリア・ウィンターリーグ(WL)のアデレード・ジャイアンツに派遣されている巨人の石塚裕惺内野手(19)が、“長野式”の新打法に挑戦していることを明かした。打席での立つ位置をシーズン中より半足分、ホームベースから離れるようにして手応えをつかんでいる。

この日もダブルヘッダー第1試合のブリスベン・バンジェッツ戦に「1番・遊撃」で出場し、右中間への3号ソロをマーク。前途有望な若者が、暴れまくっている。

 あっという間だった。快音を残した打球を目で追いながら、石塚は走り出した。打球はそのまま右中間フェンスを越えた。ブルペンにいる投手陣に応えながらダイヤモンドを悠々と一周。ホームに戻り「しゃー!」と国際色豊かなチームメートと喜んだ。

 バンジェッツとのダブルヘッダー第1試合、1―1で迎えた6回無死、22年11月に侍ジャパンと対戦したオーストラリア代表に選出された左腕のジョン・ケネディの初球、真ん中高めの135キロ直球を強振した。この日、最初の2打席は初球を見逃しており「さすがに合うだろうと思って振りにいったら、ドンピシャでした」と振り返った。ケネディとは6日の対戦で3打席に立ち2打数無安打に封じられていたが、やり返した。「前回はタイミングが全然合わなかった。やっぱり打席数を重ねるごとに合ってくるんだなと思ったけど、もっと早く対応したかった」と気を引き締めた。

 オーストラリアで、新打法と出会った。きっかけは“偶然”だった。第3カードまで打率3割7分2厘、1本塁打、10打点と好成績を残していると、第4カードから執拗(しつよう)な内角攻めに遭った。強打者と認められた証しだが、“代償”としてバットを折り続け、豪州に持参した予備がなくなった。以降、先輩の荒巻にバットを借りて出場しているが、85センチの自身のモデルより1センチ長い。その1センチを“よりどころ”に、第4カード最終日(7日)からそれまでより半足分、約14~15センチ、本塁側から離れて立つように変更した。

 「内、内って攻められてきたので、どう攻略していくか、対応力を磨く上で大事になってくると思うので」。窮地をチャンスに変えるチャレンジ精神も頼もしいが、舌を巻くべきはその適応力。変えてから2打席目で、プロ入り初となる逆方向にアーチをマークした。「スイングを変えないで、意識とか立ち位置で見え方が変わって結果も変わる。こういう視点もあるんだと気づけた打席になりました」。憧れの長野のように打席から離れて立つスタイルで結果を残した。

 立つ位置を変えてから5試合で13打数6安打2本塁打と勢いが止まらず「ちょっと外(角)が遠く見えますけど、もうあんまり気にならないですね」と慣れ始めている。プロ入りしてから公式戦ではなかった逆方向への本塁打が2本続いた新打法。帰国後も継続するかは、使用するバットと合わせてオフに検討していく方針だが、引き出しが増えたことは間違いない。

 帰国まで残りは1カード。「次でしばらく実戦からは離れるので、今までやってきたことをもう一度しっかりやってどうなのか見たいと思いますし、最後なのでなんとか勝利に貢献して帰りたい」と石塚。最後までこの時期には貴重な実戦の場を活用していく。

 ◆長野久義の打席での立ち位置 ホームベース寄りの打席ラインから約1足半ほど離れて立つ。日大4年時、外角へ逃げるボール球の変化球に手を出さないための対策として編み出したもの。「これで通用しなかったら変えよう」と臨んだ1年目のオープン戦で打率2割8分6厘をマークし、プロでも独特のスタイルを貫いた。

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