【ブリスベン(オーストラリア)14日=臼井恭香】巨人の石塚裕惺内野手(19)、荒巻悠内野手(22)らが11月からオーストラリア・ウィンターリーグ(WL)に参戦し、アデレード・ジャイアンツの一員として奮闘中。豪で武者修行のリアルを巨人ファーム担当の臼井恭香記者が「見た」。

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 一体感がすさまじかった。1勝のために本気で悔しがり、本気で喜ぶ。短期間で結成された“急造チーム”とは思えなかった。巨人から4人、フィリーズのマイナー傘下から5、6人、そして現地の選手が約20人。国籍はさまざまだったが、誰もが1つのプレーに全力を尽くした。

 現地の野球の注目度は高くはない。レストランのテレビではクリケット、アメフト中継などが流れ、新聞で取り上げられるのはそれに加えてテニス、サッカーなど。環境も決して恵まれてはいない。特に私が行ったブリスベン・バンディッツの本拠地、ホロウェイ・フィールドは選手がベンチに入り切らず、横に椅子を並べて座っていた。試合中の飲み物も十分ではなく、チームスタッフに売店で買ってきてもらう選手も見受けられた。巨人では2軍でも丁寧に畳まれて選手個人のロッカーに戻ってくる洗濯物。豪では、十分に乾いていないこともあったそうだ。

 来季の契約は保証されていない。選手の多くは、少しでもいい結果になるよう判定に一喜一憂する。投手は好打者を何とか抑えようと厳しく内角を攻める。石塚は右膝下に死球を当てられ、内出血は何日たっても引かなかった。痛々しかったが、それも本気勝負の結果。ベンチで悔しがり、荒々しい態度を見せる選手を見た石塚は「いろいろな選手がいる。必死にやっているのは見習う部分でもあると思う」と視野が開けた様子だった。

 フィリーズから派遣されているクリス・アダムソン監督は、あまり自分からは指導しなかったという。日本と違って練習量はいくらでも減らせる。暑さを理由に、手を抜こうと思えば抜くこともできる。しかし裏を返せば、考える力が身につく場。荒巻のように日本ではやらないセーフティーバントをやってみたり。

状況を見て、どれだけ成長できるかはそれぞれの選手にかかっている。ハングリー精神が磨かれるだけではなく、自分を客観的に見られる貴重な機会。石塚はもちろん、参加した全選手の今後が楽しみだ。(巨人ファーム担当・臼井 恭香)

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