◆ショートトラック 全日本選手権 最終日(14日、東京辰巳アイスアリーナ)

 男女1000メートルが行われ、女子は長森遥南(23)=アンリ・シャルパンティエ=が1分34秒74で優勝し、13日の500、1500メートルに続き、18大会ぶりの女子3冠を達成した。来年2月のミラノ・コルティナ五輪で残り2枠だった女子代表争いの激戦を制し、逆転で滑り込んだ。

女子は長森、渡辺碧(あおい、26)=トヨタ自動車=がミラノ五輪代表に選出され、男子4人、女子5人の布陣でミラノに挑むことになった。

 ショートトラック界にニューヒロインが誕生した。五輪出場がピンチだった長森が、一発逆転でミラノ切符をゲットだ。「頭が真っ白。本当に言葉が出ない。頑張らないといけない」と自分の名前が呼ばれると涙があふれ出た。代表選考に関わるワールドツアー(WT)に出場できず、大きく後れを取ったが、最後の最後に滑り込んだ。

 前日に2冠を手にし、この日の1000メートルでも優勝。ラスト2周からギアを上げる、狙い通りのレースで今大会3度目の頂点に立った。女子3冠は五輪2大会出場の神野由佳以来、18大会ぶりの快挙だ。「3冠できるとは思っていなかったので、本当にうれしい」とガッツポーズでゴールを駆け抜けた。

 学生時代はショートトラックと並行してゴルフでも腕を磨いた。

同じ年のプロには米女子ツアーで活躍する双子の岩井明愛(あきえ)、千怜(ちさと)=ともにホンダ=姉妹がいる。プロを目指すほど打ち込み、ゴルフが大好きだったが、所属先の監督の意向や「(岩井姉妹ら)その人たちが輝き始めたから」とクラブを置いた。ショートトラック一択で突き進んできた長森は「ゴルフを諦めて、スケートに専念して良かったと、3冠を取れて思えた」とかみしめた。

 今春に関学大を卒業した後は引退も考えた。しかし、所属先から声がかかり、競技続行。拠点を大阪に移して専念したことで、リンクで急成長を果たした。強みは粘り強く、バランスを崩しても立て直せることだ。今大会では3種目とも後半に先頭を捉えて優勝し、「自分のレーススタイルがわかって、自信を持てるようになった」。

 五輪メダル獲得なら日本女子初だ。狙うはリレーでの表彰台入り。初の代表入りを決めて、年末年始の合宿などでチームになじむ練習が始まる。「ゴルフで鍛えた(上半身を使った)プッシュを頑張りたい」と選手交代の技術を極めていく。

23歳。いざ五輪へ突き進む。(富張 萌黄)

 ◆長森 遥南(ながもり・はるな)

 ▽生まれ、サイズ 2002年4月25日、愛媛。神戸市東灘区出身。23歳。155センチ▽家族 両親、弟(高3)

 ▽競技歴 小学1年時に神戸市のスケート教室に行って。恩師がスピードスケートのコーチだったことから始めた。母は「浅田真央さんさんみたいなってほしい」とフィギュア教室に連れて行ったつもりだった。親和女子高を卒業し、関学大4年時の今年2月、ハルビン冬季アジア大会女子3000メートルリレーで銅メダル

 ▽ゴルフ ショートトラックと並行して小学2年時から始める。18年日本ジュニア選手権出場。「ガチでプロを目指していた」と話し、プロテスト受験経験もある。関学大では大会だけ出場する“助っ人部員”だった

 ▽仕事 今年4月、洋菓子店を展開する「シュゼット」に入社。

オフシーズンには焼き菓子のフィナンシェ作りに励む。生地を混ぜる工程を担当する

 ▽趣味 ピアノ。小学1年から中学2年まで習っていた。「弟と連弾するのが楽しい」

 ▽ルーチン 試合前に温泉や岩盤浴に行く。「体が軽くなるような気がする」

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