第102回箱根駅伝(来年1月2、3日)で1996年以来30年ぶり、史上最多15度目の総合優勝を目指す中大が18日、東京・多摩キャンパス内で会見した。箱根制覇へ仲間を鼓舞するのが主将の吉居駿恭(しゅんすけ、4年)だ。

昨年11月の全日本大学駅伝12位の大敗を受けて、今季のキャプテンに立候補。チームを束ねて心身ともに成長を遂げ、ラストイヤーに燃えるチームの大黒柱は出走区間への明言は避けたが、兄・大和(トヨタ自動車)も果たせなかった悲願へと中大を導くことを力強く宣言した。

 最終学年を迎えた吉居の表情はより一層、引き締まっていた。箱根は2年時に7区、3年時に1区で区間賞を獲得。3年連続の快挙も懸かるが「与えられた区間で区間賞、先頭でタスキを渡すために頑張っていきたい」と語気を強めた。前回は1区で序盤から果敢に飛び出し、2位に1分32秒の大差をつけ、5区の前半まで中大が首位を快走する原動力となった。今回は「走りたい区間は特にない」と出走区間への言及は避けたが「絶対に優勝したい」と30年ぶりの王座奪還へ、熱く意気込んだ。

 まさかの屈辱が大きな転機になった。昨年11月の全日本は、優勝候補の一角とされていたが12位と低迷。吉居も7区14位に沈み「応援してくれる人に恩返ししたいと思った。ここで軌道修正しなければ」と雪辱を胸に、今季の主将に立候補。「あまり人前に出て引っ張るタイプではない」と藤原正和監督(44)は驚いたという。

 今季最も心がけたのは意識付けだ。兄が中大4年時の24年大会も総合Vへの好機だったが、直前に体調不良者が続出し総合13位。指揮官も「上位層は熱量を持っていても、部員全員が箱根優勝を目指していたかというと、うまく作ってやれなかった」と振り返る。

 当時の雰囲気を知るからこそ、吉居は「箱根で優勝するために、勝ちたい気持ちをどれだけ強くできるか」と日常から箱根のオーダーを話し合ったり「優勝したい」と口にし続けてきた。全員の気持ちは同じ方向を向き「今年はしっかりとチーム全体で、目指している雰囲気がある」と一致団結。全日本は過去最高に並ぶ2位と躍進し、藤原監督も「立場が人を作る」と主将の成長に目を細める。

 見据えるのは兄も達成できなかった箱根の頂点だ。「兄が中大を盛り上げてくれたことで良い選手がそろって、戦力が整ったと思う」と弟としての強い思いもある。「このチームで勝ちたい」と吉居。箱根駅伝随一の名門を完全復活へとけん引する。(手島 莉子)

 ◆吉居 駿恭(よしい・しゅんすけ)2003年4月8日、愛知・田原市生まれ。22歳。

実業団のトヨタ自動車で活躍した父・誠さんの影響で小学5年で陸上を始める。田原東部中では3年時に全国中学大会1500メートル優勝、3000メートル2位。宮城・仙台育英に進み、全国高校駅伝に3年連続出走。中大法学部に進学し、箱根駅伝は1年時4区5位、2年時7区区間賞、3年時1区区間賞。168センチ、52キロ。家族は両親と双子の兄。

 ◆中大 1920年創部。箱根駅伝は総合優勝14回、6連覇(1959~64年)、出場99回、連続出場87回はいずれも大会最多。出雲駅伝の最高は92、96、05年の2位。全日本大学駅伝の最高は93、95、05、25年の2位。長距離部員は選手40人、学生スタッフ17人。練習拠点は八王子市。

タスキの色は赤。主なOBはシドニー五輪マラソン代表の佐藤信之、ロンドン五輪マラソン代表の山本亮(現中大コーチ)ら。

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