今季まで巨人の2軍監督を務めた桑田真澄氏(57)が18日、都内で24年から2軍公式戦に参加しているオイシックスの「チーフ・ベースボール・オフィサー(CBO)」就任会見に出席した。10月28日に巨人を電撃退団し、一度は充電期間を設ける方針だったが、オイシックスの熱烈オファーもあり新たな挑戦を決断。

「サイエンス」「バランス」「リスペクト」の3つを育成のキーワードに掲げて若いチームを育て、中長期的に「勝利と育成」の両立を目指すことを明かした。

 巨人を電撃退団してから1か月半。新天地を新潟に決めた桑田CBOが、決断に至った理由を明かした。「また新たな挑戦をしたいなと思いまして、契約にいたりました。微力ですが、全力を尽くしたいと思っております」。新潟からも多くのメディアが駆けつける中で所信を表明した。

 10月28日に巨人を退団。当初、しばらくは充電期間に充て、ワイン作りや米作り、また米球界を視察して「情報をアップデート」することも検討していたが、オイシックスからは早い段階でオファーが届いた。オイシックスの高島会長や球団幹部と複数回会う中で、「熱い思いに心を打たれた。何とか力になりたいなという気持ちが芽生えてきた」。2軍戦加入から2年という若いチームのために、尽力することを決めた。

 来年1月からCBOに就任する。

ユニホームは着用しないが、月に半分以上は新潟に滞在し、選手への技術指導のほか監督、コーチ、チームスタッフへの助言や指導、選手の育成法、練習環境の構築や整備、選手の評価など球団運営にも関わっていく。育成キーワードは「サイエンス」「バランス」「リスペクト」の3つ。スポーツ医科学を活用しながら個々の成績、能力を向上させ、トレーニング量と休養などの最適なバランスの実現を目指していく。さらに相手や審判への敬意を忘れない上で「何よりも自分自身をリスペクトできる選手を育てていきたい」と、強い心を養う大切さも伝えていく。

 チームは今季、イースタン8チーム中7位。来季目標である勝率5割以上でのAクラス入りへ向けて課題は多いが、自身の経験と知識を還元しながら中長期的に「勝利と育成の両立」を目指していく。会見では、中学年代の野球人口が10年前から6割減というデータも示しつつ、「オイシックスが強くなり、ファンに愛されるチームとなって良き文化を作り、将来的に新潟県の子どもたちにも野球を普及しながら、それを全国に広げていってほしい」と構想も明かした。

 21年から5年間在籍した巨人は離れたが、これまで関わった教え子の飛躍を願う気持ちは変わらない。「最後に選手、コーチ、スタッフにあいさつができなかったので、すごくさみしかったし、心残りがあった。でも来年は対戦できるので、彼らの成長を楽しみにしています」。野球人として選んだ新たな道に、全力を注ぐ。(小島 和之)

 ◆桑田CBOに聞く

 ―これまでの経験をどのように生かすか。

 「オイシックスはNPBに参入して2年目という非常に若い球団。資金力、そして戦力も劣ることは否めない。特に巨人と比べたら雲泥の差があると思っています。この若い球団で僕自身が新しい挑戦をすることで、日本野球界の発展につながっていくのではないか、という思いもありました」

 ―どのようなチームを作っていくか。

 「僕一人が来たからといって、急に強くなるというわけにはいかない。やはり勝負の世界で長年生きてきましたので、厳しさもよく分かっていますし、戦力的に見ても非常に苦しいと思います。しかし若い球団だからこそ、チームの文化をしっかりと作って、育成システムを構築し、選手の強化を短期、中期でやって長期的には勝てるチームに育てていきたい」

 ―将来的にオイシックスが日本球界に与える価値とは、どのような部分か。

 「オイシックスが強くなっていく過程を見ながら、また新しいチームが参入してきたりして、野球界の発展につながっていけたらいいな、と思っています」

 〇…桑田CBOの就任会見にはオイシックス・武田勝監督(47)も同席。現役時代に通算173勝を挙げたレジェンドの加入に、「驚いています。例えで言うなら私が社会人(シダックス)時代に、野村克也さんが監督になられた時のようなドキドキとワクワク感」と心境を明かした。自身は来季が就任2年目。「本当に影響力、発信力のある方なので、力をお借りしてチーム一丸となって良いチームにしていけたら」と共闘を心待ちにした。

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