◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 ともすれば“塩対応”に聞こえるコメントに、頼もしさを感じた。11月26日、巨人のリチャード内野手(26)が1600万円アップの年俸2600万円で契約更改。

来季目標とする数字を問われ「こういうのは言いたくない派なので、全力プレーを目標に頑張ります」とあっさり会見を締めくくった。

 5月にトレードで加入。当初、試合後の囲み取材は10分超えが当たり前だった。「耳がボワッとするくらい盛り上がった」「歓声がすごかったんで、その振動で打球が伸びた」。これがソフトバンク担当が口をそろえて話していた“コメント力”か、と思った。しかし、レギュラーに定着した8月下旬以降は野球に関するどんな質問にも「気持ちです」「必死です」。右肩上がりの成績と反比例し、返答は短くなっていった。

 勝っても負けても報道陣に囲まれる巨人。取材に嫌気がさす瞬間があるのも当然だ。あるとき「疲れている試合後にいつも申し訳ない」と伝えると「それは全然、いいんすよ」。じゃあ、手の内を明かしたくないから?「いや、僕なんか『対策されるから』というレベルの選手じゃない。ちょっと結果が出たくらいで、野球を語りたくないんですよ。

僕は『リチャード』でいいんですよ。バカに見られたいっす」

 “地獄”の秋季キャンプはバットを振りまくり、休日も汗を流す姿があった。「メジャーリーガー級の飛距離」や「おもしろキャラ」をフィーチャーされる機会が多いが「謙虚さ」も周囲に愛される理由の一つだと思う。真面目な大砲が来季、何本ホームランを打ってくれるのか。ワクワクが止まらない。(巨人担当・内田 拓希)

 ◆内田 拓希(うちだ・ひろき) 20年入社。静岡支局、日本ハム担当を経て24年から巨人担当。

編集部おすすめ