フィギュアスケート 全日本選手権 兼ミラノ・コルティナ五輪最終選考会 最終日(21日、東京・代々木第一体育館)

 最終種目の女子フリーが行われ、今季限りで引退する坂本花織(25)=シスメックス=が、ショートプログラム(SP)に続き、フリーも1位でそろえて、5連覇を達成した。最後の全日本で有終の美を飾り、日本女子初の3大会連続の五輪出場を決めた。

試合後にミラノ・コルティナ五輪に挑む4種目、12人の代表が発表され、女子は3位の千葉百音(20)=木下グループ=が3位、4位の17歳中井亜美(TOKIOインカラミ)が初代表入りを決めた。

 泣いても泣いても、坂本の涙は止まらなかった。優勝の瞬間、顔がゆがんだ。中野園子コーチと、歓喜の抱擁をかわした。ミックスゾーンでも大粒の涙が頬を伝いながら「終わってから初めて『ああ、これが最後なんだな』と。最後まで、自分らしい滑りができた」。史上5人目の5連覇、女子初となる3大会連続五輪切符は、嬉し涙にぬれた。

 現役最後の全日本、そして最終滑走のフリー。スタンドには、22年北京五輪を共に戦った樋口新葉がいた。7本のジャンプ全てを降り、表現力では審判1人が10点満点をつけた。こん身の「愛の讃歌」。樋口はただ、涙を流していた。

「これでもう、全日本で負けることはないね」。中野コーチからは、最大級の賛辞がおくられた。

 国内ラストダンスは、多くの選手が見守った。坂本の人柄だった。GPファイナル前、同門の三宅咲綺がインフルエンザで寝込んだ。坂本は必要な物があればとLINEしたが「インフルって、画面見るのもしんどいわ」と、朝練習後にスーパーに駆け込んだ。2リットルの水、ゼリーやいちご、茶碗蒸しなどを「5日分くらい。多くても、元気になったら食べるやろ」と両手に袋を下げた。「ちゃんと(アレルギーの)甲殻類が入ってないかな?」と、気遣いも忘れない。自らに厳しく、人には優しく。常日頃「支えられている」と言うが、この日は仲間たちが心からエールを送っていた。

 3度目のオリンピック

ジュニアの2位、島田を振り切って完全Vで決めた。「密かに、目標にしていた。不言実行です」。いたずらっぽく笑い「人生、虹色」と喜びに浸った。試合後の午後11時過ぎに袖を通した、代表ジャージー。チームジャパンの選手と共に、坂本は笑顔で写真に収まった。

 イタリアは06年トリノ五輪で荒川静香が日本史上初の金メダルに輝いた場所。その地で日本は男女シングル、ペア、そして団体で過去最多メダルに挑む。坂本は「個人、団体ともに銀メダル以上。過去最多メダルも、もちろん目指せると思っている」と、女子エースとして力強く宣言した。残りわずかのスケート人生。ミラノで最高のフィナーレを迎える。

(大谷 翔太)

 〇…試合後に代表選考が行われ、3人の男子は優勝した鍵山優真、佐藤駿に続き、実質1枠だった3人目に三浦佳生(20)が順当に選ばれた。佐藤と三浦はともに初の五輪。男子3人、女子3人、ペアで2組4人、アイスダンスで2人となり、派遣数は過去最多の12人となった。

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