第102回箱根駅伝(来年1月2、3日)で東農大は、2年ぶり71度目の出場となる。チームが掲げる「16年ぶりのシード奪回」へ、1万メートルで日本学生最高記録(27分21秒52)を持つエースの前田和摩(3年)が力走を誓った。

昨年の箱根予選会は、肺気胸を患い出場できず、チームも本戦切符に1秒届かず泣いた。雪辱へ、今年10月の予選会はチームトップの個人14位と奮闘し、東農大の予選6位で出場に貢献。2区出走が予想される2年ぶりの箱根路へ古豪復活の起爆剤となりそうだ。

 これまでの悔しさを箱根路にぶつける。今月13日の会見で「シード権奪回」の目標を掲げるチームの大黒柱として、前田は自覚を胸に挑む覚悟を口にした。「チームのいい流れをつくるため、1秒でも前でタスキをつなげるように頑張ります」と誓いを立てた。

 衝撃的な走りで復活を印象付けた。10月の箱根予選会。直前に左膝付近を痛め、状態は「30%くらい」(前田)だったが、走り出せば止まらない。個人14位の走りでチームに勢いをつけ、6位通過に導いた。ルーキーイヤーの予選会でいきなり日本人トップ(全体9位)の1時間1分42秒で駆け抜け、周囲の度肝を抜いて以来の快走。東農大に前田あり、を再び強烈に印象づけた。

「走りで引っ張るというのが役割だと思っている」と力強い。

 今年は、ここまでこの予選会と全日本の関東選考会しか出場はしていない。体調などを考慮しながら、狙った大会でしっかり結果を残す。「一戦入魂」はエースのスタイル。本戦にも照準を定め、状態を上げてきている。「元々、高校の時からバンバン試合に出る方じゃない。去年、今年と体調不良とけがが続いているってことで、無理に試合に出ることはなく最低限チームの力になれる試合に集中して出ている」と話す。

 初出場した第100回大会はケガの影響もあって、7区13位だった。第101回大会は、左の肺気胸を患い予選会にすら出場できなかった。チームは10位通過した順大に史上最小に並ぶ1秒差の11位で敗退し、エースは悔しさにまみれた。今大会はその雪辱を果たす舞台でもある。本戦ではエースの集う花の2区出走が想定される。

「強い選手がたくさんいる区間。そこで上を目指せたら、自分にもチームにもいい効果がある」。屈辱をバネにはい上がってきたエースが「松葉緑」復活へといざなう。(松末 守司)

 ◆前田 和摩(まえだ・かずま)2005年1月16日、兵庫・西宮市生まれ。20歳。深津中時代はサッカー部でセンターバックとして活躍。報徳学園高に入学後、本格的に陸上を始める。3年時の全国高校総体5000メートルで日本人トップの4位。東農大1年時の箱根予選会で、当時のU20日本歴代2位の1時間1分42秒で日本人トップの9位。2年時の日本選手権1万メートルではU20の日本新記録となる27分21秒52で3位に入った。177センチ、55キロ。

 ◆東農大 1919年に独立した競技部として創部。

箱根駅伝には21年の第2回大会に初出場。最高成績は2位(77年)。往路は優勝1回(74年)、復路は最高2位(77年)。出雲駅伝は最高5位(91年)。全日本大学駅伝は最高2位が5回(74~77年、85年)。タスキの色は松葉色。大根を持って踊る「青山ほとり」(大根踊り)は応援団の名物。長距離部員は47人、学生スタッフは7人。主なOBは24年パリ五輪男子マラソン代表の小山直城(ホンダ)ら。

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