第102回箱根駅伝(来年1月2、3日)で3年連続92回目の出場を果たす日大は、登録選手上位10人の1万メートル平均タイムが28分33秒29と出場21チーム中5番目と日大史上最速布陣で挑む。新雅弘監督(64)体制3年目の伝統校は、主将の中沢星音(せおん、4年)を大黒柱に躍進を狙う。

前回大会はけがで欠場し、今季は春先に肺気胸を患って入院も経験。卒業後は一般企業に就職して第一線を退く予定で、現役ラストランとなる箱根路で、12年ぶりのシード復帰へとけん引する。

 苦境を乗り越え、集大成の大舞台に挑む。中沢は「目標としてきた箱根だからこそ、しっかり走り切り、心から楽しかったと思えるレースにしたい」と前向きに語る。

 2年時の箱根駅伝後、責任感の強さを評価され、4年生の総意で3年から主将に就任。だが、昨夏に負った左膝下付近の疲労骨折で箱根予選会も、本戦も出走できず。前回大会で日大は最下位に終わった。「何もできない悔しさがあった」と歯がゆさを味わった。

 悔しさをバネに今春から練習を再開も、練習中に息苦しさを感じて病院へ。肺気胸と診断され、最終学年での想定外の出来事に不安も募った。それでも走れない期間は、名門では異色の2年連続主将として存在感を発揮し、仲間を支えることに尽力した。「各選手に反省点や目標をよく聞いていた」と主将自ら献身的な姿勢を見せ、チームを一つにまとめた。

その結果、今季は1万メートル28分台以内の選手を17人擁する史上最速軍団へと成長を遂げた。

 リハビリを経て今年7月に戦列復帰。ピークを箱根一本に定めて調整を重ね、予選会ではケニア人留学生エースのキップケメイ(3年)に次ぐチーム2番手の個人42位とけん引し、チームの4位通過に貢献。新監督も「よくここまで戻してくれた」と目を細めた。

 2大会前に走った復路のエース区間9区での雪辱を希望する。「自分の実力不足もあって、仲間に迷惑をかけてしまった」と24年は区間19位と苦戦。今回はシード権争いの行方を左右する可能性もあるが「しっかり戦いたい」と前を向く。卒業後は一般企業に就職するため、箱根が現役ラストランだ。「陸上人生のすべてを出し切りたい」と中沢。「星音(せおん)」。星にまで名前が響くような人間になってほしい―。そんな願いが込められた名の不屈の主将が、苦楽を経て輝く力走を披露する。

(綾部 健真)

 ◆中沢 星音(なかざわ・せおん)2004年2月19日、岩手・宮古市生まれ。21歳。宮古市立第一中入学時に陸上競技を志すも、陸上部が廃部となりサッカー部に入部。一関学院入学と同時に本格的に陸上競技を始め、21年の都大路では4区10位。22年に日大経済学部に入学。学生3大駅伝は1年全日本7区18位。2年箱根9区19位、4年全日本4区13位。ハーフマラソンの自己ベスト記録は1時間3分6秒。173センチ、58キロ。

 ◆日大 1921年創部。箱根駅伝には22年の第3回大会で初出場。35年からの4連覇を含め、歴代3位の優勝12回。

出雲駅伝は優勝5回。全日本大学駅伝は優勝3回。学生3大駅伝通算20勝は駒大、日体大に続き、早大と並んで3位。練習拠点は世田谷区。タスキの色は桜色。長距離部員は47人、学生スタッフ13人。主なOBはマラソンで五輪3大会出場の宇佐美彰朗氏、箱根駅伝2度出場の俳優・和田正人ら。

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