◆プロボクシング「THE RING V:ナイト・オブ・ザ・サムライ」▽スーパーバンタム級(55・3キロ以下)12回戦 〇中谷潤人(判定3ー0)セバスチャン・エルナンデス●(12月27日 サウジアラビア・リヤド、ムハマド・アブド・アリーナ)

 【リヤド(サウジアラビア)27日=勝田成紀】WBA、WBC、WBO世界スーパーバンタム級1位・中谷潤人(27)=M・T=がWBC世界同級10位セバスチャン・エルナンデス(25)=メキシコ=を3ー0の判定で下し、スーパーバンタム級転向初戦を白星で飾った。中谷は2015年4月のプロデビュー戦以来の連勝を32に伸ばし、試合終了時点で亀田和毅井上尚弥を上回り現役選手では最多連勝記録となった。

ジャッジ3人の採点は2人がともに115-113、1人が118ー110だった。115ー113をつけたジャッジ2人はともに最終12回で中谷に10-9をつけており、エルナンデンスにポイントを奪われていたら、合計で114ー114となり、判定は1ー0のドローに終わっていた。

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 中谷が初めて上陸した中東の地で、階級屈指の強さを証明した。エルナンデスはここまで無敗で、KO率は中谷の77・4%を上回る90・0%を誇っていた。昨年は世界4団体スーパーバンタム級統一王者・井上尚弥(32)=大橋=のスパーリングパートナーを務めた強打者だったが、世界3階級制覇王者にはかなわなかった。右目を大きく腫らした中谷は、リング上のインタビューで「とてもタフな試合になって、自分のボクシングキャリアにとって、とてもいい経験になりました」と振り返った。

 「階級を上げることで、相手の耐久力は上がる。エルナンデス選手はタフで打たれ強い選手だとあえて思って調整するようにしました」。今年6月、西田凌佑(六島)に6回終了TKO勝ちして自身が保持していたWBC世界バンタム級(53・5キロ以下)王座にIBF王座を加え、念願の統一王者となった。来年5月、東京ドームで井上尚弥との対戦が期待されることをふまえ、スーパーバンタム級に上げることを決意。西田戦以降は転級を踏まえて、トレーニングを開始。9月にバンタム級の2団体王座を返上すると、11月からは米国ロサンゼルスに渡り、15歳から指導を受けるルディ・エルナンデス・トレーナーのもとでスパーリングを中心とした強化キャンプを行った。

 「(尚弥戦を)期待されることは感じていますが、まずはやるべき仕事があるのは明らか。エルナンデス戦は勝たないといけない。僕の目標の一つは、来年5月の試合への期待をさらに高めるようなパフォーマンスを見せること」。ロスではWBA世界スーパーバンタム級2位ラモン・カルデナス(米国)と連日のように実戦練習を行った。カルデナスは今年5月、米ラスベガスで尚弥と対戦し8回TKO負けしているが、2回に左カウンターでダウンを奪ったことのある強豪だ。中谷は将来、対戦する可能性があるカルデナスと実戦練習をすることで「手の内はある程度、知られてしまうかもしれません。でも、お互いが次戦に強くなるために協力し合えて、切磋琢磨していけるのは本当に素晴らしい」と積極的にグラブを合わせた。

 「尚弥選手は様々な引き出しを持っている。僕自身も引き出しの多さとその質の高さを持って戦わないといけない」。エルナンデス戦の先には尚弥戦を見据えていたのは間違いない。だが、サウジアラビア入りして、尚弥陣営は来年5月決戦について、中谷戦とは別に「フェザー級(57・1キロ以下)に転向して世界5階級制覇を目指す選択肢もある」と明かした。だが、中谷に動揺はなかった。

尚弥は「いつかは対戦する相手として見ている」と常にしてきたように冷静だ。

 5月に尚弥と対戦して勝てばいい。尚弥がフェザー級で5階級制覇を目指せば、返上したスーパーバンタム級の王座を狙う。中谷は3団体でランキング1位。IBFは3位だが1、2位が空位で実質的にはトップの地位にいる。2026年、中谷はスーパーバンタム級でタイトルを獲得し、井岡一翔、井上尚弥、田中恒成に続く日本人4人目の世界4階級制覇王者を目指す目標に変わりはない。

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