第102回箱根駅伝(来年1月2、3日)で、2年ぶりのシード権奪回を目指す大東大に異色のランナーがいる。トヨタ自動車が運営する認定職業訓練校・科技学園高(愛知)出身の菅崎大翔(やまと、1年)だ。

実習や勉強で多忙な中、高校3年時の愛知県高校駅伝でエース区間の1区(10キロ)4位など抜群のポテンシャルを誇った。その後、一度はトヨタ自動車に就職したが、箱根への道を諦めきれず、1年遅れで大東大へ進学。“アクセル全開”で初の夢舞台を走り抜ける。

 箱根に懸ける思いは人一倍強い。菅崎は「自分だからこそ、この環境のありがたみを感じることができている。箱根では、自分が流れを作りたい」と力強く話した。1年遅れで入部も潜在能力が開花し、猛スピードで成長を続ける異色ランナーに、真名子圭監督(47)も「2、3年後、エースになってもらわなければいけない選手」と期待を寄せている。

 “トヨタの町”愛知・豊田市出身。両親がトヨタ自動車に勤め「憧れだった」と同企業が運営する科技学園高に進んだ。中学まではサッカーをしていたが「新しいことに挑戦したい」と長距離走を始めると、実習や勉強で多忙な合間の練習でも記録が着々と伸びた。

 元大東大監督で豊川高の奈良修監督(54)が、同じ愛知県内の大会で好素材を“発掘”し、真名子監督に連絡。実際に走りを見た真名子監督も「バネが魅力的」と評価し勧誘した。

3年時の愛知県高校駅伝(11月)はエース区間1区4位と快走するなど成長し「自分はどこまで行けるんだろうなって思った」。ただ就職はずっと考えてきた既定路線。昨年4月、トヨタ自動車に入社した。

 元町工場に派遣され、ライン作業に入った。昼勤務では午後4時の終業後、夜勤では午後4時の始業前に走り「帰ってきたらヘトヘト」と睡眠時間も多くなかった。当時の5000メートル記録会で15分も切れず「努力と結果のギャップがあった。自分のやりたいことは何だろう」。葛藤の末「チャレンジするなら今しかない」と真名子監督に「やっぱり大東大に行きたいです」と伝えた。

 9月の退社から今年4月の入学まで、元トヨタ自動車陸上部で11年テグ世界陸上マラソン代表の尾田賢典さん(45)に指導を仰いだ。実力を取り戻し、今年5月の全日本予選会はチーム5番手で通過に貢献し、本戦も1区出走。11月の上尾シティハーフマラソンは1時間2分17秒をマークした。

 全日本の応援に駆けつけてくれた両親や高校時代の仲間、快く送り出してくれた元職場の同僚の顔を思い浮かべ「走りで結果で恩返ししたい」と菅崎。

初の箱根は3区希望で「大東大記録(1時間3分6秒)は絶対に出したい」と感謝の走りを誓う。(手島 莉子)

 ◆菅崎 大翔(すがさき・やまと)2006年2月2日、愛知・豊田市生まれ。19歳。愛知・松平中時代はサッカー選手で、科技学園高から競技を始める。3年時の愛知県高校駅伝はエース区間1区4位。卒業後はトヨタ自動車に就職したが昨年9月に退社。今年4月に大東大に入学した。学生3大駅伝デビューとなった今年11月の全日本大学駅伝は1区21位。

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