◆スピードスケート 全日本選手権兼ミラノ・コルティナ五輪代表選考会 最終日(28日、長野市エムウェーブ)

 男子1000メートルで元日本記録保持者の山田将矢(ウェルネット)が最終組で転倒し、逆転での五輪代表には届かなかった。レース後、「さっきのレースが最後になります。

これ以降は出ない。引退という形にさせていただきます」と、現役引退を表明した。

 けがを何度も乗り越えた競技生活だった。2020年に当時の日本記録を2度更新。五輪メダル候補と期待されたが、21年2月に負傷した左足首痛に悩まされた。2季前のW杯で1000、1500メートルで2冠に輝くなど復活を果たしたが、今度は腰痛が立ちはだかった。

 今大会も状態は万全ではなかった。「競技を始めた頃からオリンピックを目指してきて、何度も届く位置に行ったり、戻ったり。激しくその狭間を行き来して、最後の最後でまた悪い波の方が来てしまった」。その悔しさはあったが「心身ともにボロボロの中、最後までよくやれたな。本当に頑張ったと思う」と、自身をねぎらった。

 現役ラストレースは転倒後、立ち上がり、歓声を受けてこみ上げるものを感じながら、滑りきった。

「悪目立ちしてしまって(他の選手の)記録に水を差してしまった気持ちが強くて申し訳ないけど、転んで立ち上がった後にこんなに応援してくれる人がいるんだと。スケート界に少しでも印象が残る選手であれたなら、幸せだったなと思いました」と振り返った。

 1つ前の組で滑った弟の山田和哉(ウェルネット)は大会新記録をマークし、初の五輪代表を確実にした。「僕の思いも乗せていってくれた分、最後は晴れやかに終われた。追い込まれた最後の種目でしっかり結果を出すというのは、実力がないとできない。強いなと思う」。五輪への思いは弟に託し、競技人生に区切りをつけた。

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