第102回箱根駅伝(来年1月2、3日)に2年連続9回目の出場を果たした東京国際大は過去最高順位の4位を目標に掲げる。前回10区で11位でもらったタスキを8位に引き上げてシード権獲得に貢献した大村良紀(4年)は、最後の箱根で再び同区での好走を誓った。

1日3食自炊するほどの料理派。オフには特大のチーズケーキを作り、チームを胃袋からもり立てる。今季は春先の疲労が抜けきれず、コンディション維持に苦戦。体の使い方を見直して挑む競技人生ラストランで、恩師の故・横溝三郎監督にもささげる歓喜を引き寄せる。

 料理大好き“シェフランナー”が、今大会も10区で救世主になると宣言した。「プレッシャーは一切ない。最高の走りをする」。目標の4位以上へ、大村は自ら積み上げてきた“食と走り”の集大成をぶつける。

 前回は10区を任され、11位から3人を抜いて8位。4チーム中、1校がシードを落とす緊迫した状況で、「思っていたよりゴールが遠かった」と人生で最も長く感じたラスト500メートルを駆け抜け、チーム3年ぶりのシード権を呼び込んだ。

 大村のこだわりは「食」。寮では毎日食事が提供されるが「居住スペースにある共有キッチンで調理している」と一日3食の自炊を続ける。

献立は野菜炒めを軸に「飽きないように工夫している」と毎食違うメニューを考える。エネルギー源は自分でまかなうのだ。

 オフはお菓子作りでチームの士気を高める。得意料理はバスクチーズケーキ。みんなで食べられるホールケーキサイズで、チームメートに振る舞うのが恒例だ。「僕は味見だけして終わることも多い」と笑うほど、出来上がるとあっという間になくなる人気ぶり。チームを一つにしてきた。

 今季、序盤にハーフマラソンを3度走ったことで疲労が抜けきらず「練習もなんとかついていくのが精いっぱい」と苦しんだ。体の使い方を見直し、トレーナーと二人三脚で、でん部やハムストリングを重点的に強化。箱根をピークに設定し、「いまは違和感なく走り切れている」と状態は上向きだ。「気持ちで頑張ってきた」と粘り強さは昨年を超え、過去一番と自負する。

 箱根は競技人生最後のレース。

度重なる故障の経験から体の使い方に興味が湧き、理学療法士を志して専門学校へ進学する。先月14日、故・横溝三郎監督の一周忌を迎え、黙とうをささげた。「高校1年の頃から目をかけていただいた。良い報告をしたい」。屈指の料理派が、恩師への思いも胸に最後の箱根路を駆け抜ける。(綾部 健真)

 ◆大村 良紀(おおむら・よしき)2004年1月22日、静岡・浜松市生まれ。21歳。浜松商1年に県高校新人陸上5000メートルで3位。東京国際大人間社会学部へ進学。箱根駅伝は3年10区6位。自己ベストは5000メートルが14分16秒28、1万メートルが29分34秒34、ハーフマラソンが1時間2分51秒。趣味は「料理で1日3食自炊中」。

オフの日には「お菓子作り」が日課で、チームメートにバスクチーズケーキをふるまう。174センチ、54キロ。

 ◆東京国際大 1965年、国際商科大として創立。86年から現校名。2008年に野球部の監督に元広島の古葉竹識氏を招くなど、複数の運動部を強化。駅伝部は11年に中大OBの横溝三郎総監督、大志田秀次監督体制で創部。箱根駅伝は16年に初出場して17位。最高成績は初のシード権を獲得した20年と22年の5位。21年出雲駅伝で学生3大駅伝初優勝。全日本大学駅伝は19年の4位が最高。練習拠点は埼玉・坂戸市。タスキの色は紺青。

長距離部員は65人、学生スタッフ8人。主なOBは東京五輪1万メートル代表の伊藤達彦(ホンダ)ら。

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