◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 衝撃が走った。今年6月に西武からトレードで加入した中日・佐藤龍世内野手(28)が、移籍から4か月で戦力外通告を受けた。

現役続行の道を模索したが、引退を決断した。

 西武時代の今年3月、寝坊で3軍降格のペナルティーを受けた。開幕後も1軍出場はなかったが、入団会見後に即、スタメンで起用された。震えながら迎えた移籍後初打席では犠飛を放った。移籍後は23試合で打率1割9分7厘(66打数13安打)、3打点。初のセ・リーグに順応しようともがいたが、振るわなかった。

 結果がすべての世界。だが、目を引く瞬間があった。移籍後初出場となった6月17日の交流戦のオリックス戦(バンテリンD)。ピンチを招いた先発・マラーに迷うことなく駆け寄った。「大したことは言ってないけど、間をつくるだけでも違うかなって」。人見知りな性格で、移籍が決まった時も不安を隠せなかった。

だが試合になれば別。勝つためなら、と先輩後輩に関係なく、一番に声をかけた。

 派手な見た目から勘違いされやすいが、情に厚く、何より野球が好きだった。新天地での背番号に「65」を選んだのは兄貴と慕うオリックスの森だった。「ドスンって感じするやん。キリいいし」。森から理由を聞き、記者は拍子抜けしたが、佐藤は「(移籍が決まって)喜んでくれた森さんが、選んでくれた番号にした」と兄貴の思いを力に変えた。251日ぶりに1軍出場した日は「吐きそう。でも楽しかった」と笑った。

 SNSには「一旦、野球とは離れます」と記した。グラウンドでまた、あの笑顔が見られたらと願っている。(中日担当・森下 知玲)

 ◆森下 知玲(もりした・ちあき)2018年入社。

西武、ヤクルトを経て24年から中日担当。

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