今年ほどクマ被害が顕著になった年はなかった。環境省によると、今年4~10月末の全国のクマの駆除数は、速報値で9765頭。

7か月間の集計にもかかわらず、統計を開始した2006年度以降で最多となっている。被害の拡大は、人間側の問題も大きいという。

 

 羅臼町職員で、30年以上ハンターとして活動する田澤道広さん(66)は「特に本州では、山と市街地の緩衝地が減ってきている」ことを原因に挙げる。「昔は境界線に人に管理された里山があり、田畑もあった。人の気配があるだけでクマは寄りつかなかった」。少子化や過疎化で里山の管理者や田畑の担い手がいなくなり、宅地開発などで市街地が広がったことで山と里がダイレクトに接続。「加えて、本州の人は無防備だなとも感じる。家庭菜園にクマが出たとか報道されましたが、近くに食料があればクマは取りに来ますよね」と苦言も呈す。

 クマが生活圏に出没した場合に市町村判断で銃器を用いて緊急的に捕獲する「緊急銃猟」も話題になった。今年は12月中旬までに全国で50件実施されたが、ここにも課題がある。

 秋田猟友会事務局は「撃つ条件が厳しすぎるとかありますが、最も大きな問題はクマじゃなくヒト」と打ち明ける。市街地での緊急銃猟の場合、市民が様子見たさに近づくことが何度もあったという。

「ある会員が市街地で発砲しようとしたら、家の2階で窓を開けて様子を撮影している人がいた。法律上、窓が閉まっていないと撃てない。注意しているすきにクマが逃げてしまいました」。被害を減らすためには、人間側の意識の変化も必要となりそうだ。

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