第102回箱根駅伝(来年1月2、3日)で、帝京大は5強(青学大、駒大、国学院大、中大、早大)崩しを目標に掲げる。その中心には、激しいシード争いとなった前回の最終10区をルーキーながら勝ち抜いた小林咲冴(しょうご、2年)がいる。

心身共に強さを増したチームの起爆剤が、今シーズンの箱根路も盛り上げる。

 し烈な争いを勝ち抜いた男は、さらに強さを増していた。小林は「状態は上がってきている。箱根までに好調の位置にいける」と頼もしく話した。中学まではサッカー選手。「自分がゴールを決めたい」と目立ちたがり屋だった少年は、栃木・足利市の駅伝で好結果を残し、「陸上の方が上を目指せる」と群馬・樹徳高から陸上部へ。「俺、箱根走るわ」と友人に言って自らを奮い立たせ、つらい練習も乗り越えた。

 目標としてきた今年1月の夢舞台。「自信があった」と1年生ながら、勝負を決めるアンカーに立候補した。9区終了時点で東京国際大、東洋大、帝京大、順大が32秒差にひしめき合う大混戦。1チームだけがシード権を落とす重圧の展開で小林は強心臓ぶりを発揮した。「一番おいしい展開で来た」。

テレビ中継に映るなら「1位の青学大か、シード争い」と走りながら想像していた。「スパートをすると映りやすくなる」と何度か仕掛け、他校を揺さぶった。

 ゴール直前までもつれ込んだ“四つ巴”の決戦。小林は10位でゴールに飛び込んだ。11位順大との差はわずか7秒。大手町に詰めかけた観客の大声援で「左耳だけキーンってなっていて…」と頭が回らない中、迎えてくれた最上級生に「ありがとう」と言われ、2年連続のシード権(10位以内)獲得を実感。帝京大は往路14位から、復路4位と大躍進した。

 今季も10月の出雲駅伝3区11位など、経験を着実に上積みしてきた。自身2度目となる箱根駅伝は、チームの流れを決める重要な1区に登録された。「あの箱根を走れたおかげで、自分には力があると実感できた。自信がついた」。強力なライバルたちを前に、帝京大が掲げる「世界一あきらめの悪いチーム」を代表する存在となった小林。

前回10区と同じコースを逆走する形となる1区で、持ち前の思い切りの良い走りを見せ、3年連続シード権獲得と打倒・5強への流れを生み出す。(手島 莉子)=おわり=

 ◆小林 咲冴(こばやし・しょうご)2005年11月17日、栃木・足利市生まれ。20歳。足利一中時代はサッカー選手。群馬・樹徳高から本格的に陸上を始め、帝京大の教育学部に進学。学生3大駅伝は1年時に箱根10区8位、2年時に出雲3区11位。自己ベストは5000メートルが14分10秒40、1万メートルが29分42秒35、ハーフマラソンが1時間3分21秒。165センチ、52キロ。

 ◆帝京大 1979年創部。99年に駅伝競走部として独立した。箱根駅伝は98年に初出場。総合の最高成績は2000、13、20年の4位。

往路最高は2位、復路最高は3位。出雲駅伝と全日本大学駅伝は18年の5位が最高。練習拠点は東京・八王子市。タスキの色は銀に赤の縁取り。部員は55人、学生スタッフ6人。主なOBは22年オレゴン世界陸上マラソン代表の星岳(コニカミノルタ)ら。

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