◇第102回東京箱根間往復大学駅伝競走往路 (2日、東京・千代田区大手町読売新聞社前スタート~神奈川・箱根町芦ノ湖ゴール=5区間107・5キロ)

 青学大が5時間18分8秒の新記録で3年連続8度目の往路優勝を果たし、史上初となる同一チーム2度目の3連覇(計9度目)に王手をかけた。首位と3分24秒差の5位でスタートした5区(20・8キロ)の黒田朝日(4年)が区間新記録の1時間7分16秒と衝撃的な走りで、4人をごぼう抜きした。

順大の今井正人、東洋大の柏原竜二、青学大の神野大地と、これまで3人の「山の神」とも異次元の激走に「僕がシン山の神です!」と宣言。総合Vに最高の弾みをつけた。(晴れ、4・6度、湿度40%、北北東の風2・7メートル=スタート時)

 ゴール地点で待つチームメートを見つけると右の人さし指を前に突き出した。芦ノ湖のゴールテープを切った瞬間、黒田朝日は伝説となった。「最後は無我夢中で記憶がない。限界を超えて走った」。主将が見せた、箱根駅伝の歴史に残る異次元の山上りだった。

 衝撃の1時間7分16秒。前回、青学大先輩の若林が記録した区間記録を1分55秒塗り替えた。15年に青学大の神野が約2・5キロ長い旧コースを1時間16分15秒で走り、現コースに換算すると1時間8分55秒前後が「事実上の区間記録」とされていたが、その記録も更新。文句なしで「4代目・山の神」襲名となったが、原晋監督(58)は「箱根史上最強だ。これまでの山の神と次元が異なる。

シン山の神誕生です」と絶賛。続けて黒田朝も言い切った。

 「もう声を大にして言いたい。僕が『シン山の神』です」

 「レース前、監督と4代目ではなくてシン山の神を目指そうという話をしていた。新しいという意味もあるし、真の、という意味もある」と胸を張った。

 重力に逆らうように軽やかなフォームで天下の険を上がった。小田原中継所を首位の中大と3分24秒差の5位でスタート。2位の早大・工藤慎作(3年)とも2分12秒差があった。城西大、国学院大、中大を捉え、残るは首位に浮上した工藤だけ。「工藤君の背中が見えた時点では何位なのか分からなかったけど、ちょっと考えて『抜いたら1位じゃん』と。優勝するしかないと思った」と残り約1・5キロで逆転。1区16位の出遅れから青学大を首位に押し上げた。

 マラソン日本学生記録(2時間6分5秒)を持つ走力に加え、上り適性も抜群だ。青学大では、夏合宿の恒例として坂タイムトライアルを行う。18キロを集団で走り、残り3キロ地点から競走。標高1322メートルから、標高差213メートルを全力疾走する。昨夏は、今年のニューイヤー駅伝で初優勝したGMOインターネットグループ勢も参加。東京世界陸上男子マラソン代表の吉田祐也らにも大差をつけた。その時、原監督は「フォームが前傾していて上り坂に適している。5区を走れば、とんでもないことになる」と断言。3連続2区起用も選択肢にあったが、1~4区を狙える選手が成長。最後まで状態を見極めた上、約1週間前に布陣を決めると、予言は的中。箱根の山に朝日が高々と昇った。

 2月1日には別府大分毎日マラソンに臨み、卒業後はGMOに進む。

「NO1を目指し、マラソンでも世界の舞台に立てるように精進する」。箱根の山で伝説をつくった黒田朝日は、箱根の山よりはるかに高い頂を目指す。(竹内 達朗)

 ◆黒田 朝日(くろだ・あさひ)2004年3月10日、岡山市生まれ。21歳。玉野光南高3年時に全国高校総体3000メートル障害2位。22年、青学大地球社会共生学部に入学。箱根駅伝は24年大会の2区で当時の日本人歴代2位の記録で区間賞。今季は出雲6区で区間賞、全日本7区で区間賞。自己ベストは5000メートル13分29秒56、1万メートル27分37秒62、ハーフマラソン1時間1分39秒。166センチ、52キロ。

編集部おすすめ