第76回NHK紅白歌合戦の平均世帯視聴率は、第2部で35.2%だった(関東地区、ビデオリサーチ調べ)。前年比2.5%増。
郷ひろみを始め、ユーミン、矢沢永吉、玉置浩二、松田聖子、福山雅治×稲葉浩志、米津玄師…。ラインアップだけを見れば、2024年以上の豪華さ。放送前から同局制作関係者の「いいものを揃(そろ)えられた」「やれる」という手応えも漏れ伝わってきており、それが、そのまま数字に反映されたとみる。
ただ、毎年視聴する側としては、どこか消化不良のような感覚が残った。数字が上がったのに消化不良…。この「違和感」の正体は何かを考えてみた。
紅白は歌い手が思いのバトンをつなぐ、一種のリレーのようなものだと思っている。例えば後半。2024年はNumber_i→B’z→藤井風と圧巻のパフォーマンスの連続で、歌い手の思いはつながっていたし、画面を食い入るように見ていたが、今年はどうだったか。例年と比べ、歌い手と歌い手とのつなぎがあまりに雑な印象を受けた。
特に終盤に差しかかった23時以降は顕著だった。福山雅治、MISIA、Mrs. GREEN APPLE、松田聖子の歌唱前に間延び。司会陣の微妙な沈黙が、それを目立たせていた。沈黙を埋めるのが司会の役割だが、有吉弘行、綾瀬はるか、今田美桜は少なくとも、与えられた役割を忠実(すぎるぐらい!?)に全うしており、そこまで求めるのは酷か。
ここ3年で見ても、22年(大泉洋、橋本環奈、櫻井翔、桑子真帆アナ)、23年(有吉弘行、橋本環奈、浜辺美波、高瀬耕造アナ)、24年(有吉弘行、橋本環奈、伊藤沙莉、鈴木奈穂子アナ)と比べても遜色はないが、毒っ気のない有吉、慎重になりすぎていた綾瀬、初々しい今田ではアンバランスに思えた。才能のある人を並べるだけではダメで、それぞれを補完し合う関係性がいかに大切かを痛感。司会者の誰が悪いということではなく、局側の人選ミスと言っていいだろう。
2024年紅白の立役者のB’zが登場したのは21時50分過ぎだった。いわゆる「22時またぎ」を、25年も見せ場に設定していた。サカナクション→矢沢永吉→SixTONESと続く流れで、矢沢がサプライズでNHKホールに登場すると、雰囲気が一変。
どのアーティストも個々に見れば、素晴らしかった。アイナ・ジ・エンド、HANAは持ち味を発揮していたし、布施明、石川さゆり、郷ひろみの“一曲入魂”のステージは胸が熱くなった。米津玄師の東京高速道路「KK線」でのパフォーマンスには、何度も見たくなるほど心を奪われた。
ミセスも初の大トリという大役を堂々とこなしていた。大森元貴は前半オープニング「放送100年 紅白スペシャルメドレー」、後半オープニング「『あんぱん』スペシャルステージ」と大忙し。収録出演の歌手が増える中、NHKホールから生の歌声を届け、さらには放送後の取材対応までするなど、その活躍と献身ぶりに、個人的にはMVPを送りたい。
世帯視聴率ではなく、個人視聴率が重視される時代だ。視聴者も観(み)たいアーティストの時だけ見るような傾向にある。それでも、NHKには「点」ではなく、「線」での番組作りを期待したい。
歌い手には原則、NHKホールからの徹底を。メドレーも減らすべきだし、1曲目を収録、2曲目をホールというような手法も極力避けるべきだ。発表の仕方を含めて、特別企画は「特別扱いする企画」ではない。局側には、全ての出場歌手へのリスペクトを忘れないでほしい。(音楽担当デスク・加茂 伸太郎)

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