9日の金曜ロードショー(後9時)は、先週に続きスタジオジブリ作品が登場。2018年に死去した高畑勲監督の遺作となった「かぐや姫の物語」(13年)が枠を60分拡大してノーカットで放送される。
誰もが知っている日本最古の物語「竹取物語」を大胆に翻案。竹から生まれたかぐや姫が自然の中で天真爛漫(らんまん)に育てられ、やがて美しい女性に成長。数々の高貴な男たちから求婚されながら、最後は月に帰って行くまでの姿を、オリジナリティーあふれるダイナミックな映像で描き出している。
初めて同作品に触れる人は「なんか、塗り残しがあるような、製作途中のスケッチのような絵みたいだな」と感じるかもしれない。だが、いったんその絵が動き出すと、これまで見たことのないような映像表現に圧倒されるのではないか。上映時間は137分と、アニメ映画にしては長い方ではあるが、一瞬たりとも気を抜くことができない。
登場するキャラクターが、その中で「生きている」ように感じられる理由の一つは、背景にある。一般的にアニメ映画は、背景の上でキャラクターが様々なアクションをするという形で製作される。だが、本作は背景もキャラクターと同様に”動かす”ことで、よりリアルなものとなっているのだ。
手間がかかれば、当然時間も必要となる。本作は当初、宮﨑駿監督の「風立ちぬ」との同時公開が発表されていたが、予定日の5か月前になって「絵コンテが完成していない」との理由で7月の公開が延期に。結局、4か月遅れの11月下旬にファンのもとに届けられた。
物語の大筋は、日本人であれば誰でも知っていると思うが、本作はそこからさらに一歩踏み込み、かぐや姫が様々な出来事の中で何を思い、なぜその行動を取ったのかという、心の内面が描かれる。その芯にあるのは「生」に対するエネルギー。公開当時、本作には「姫の犯した罪と罰。」というキャッチコピーが付けられていたが、かぐや姫が自らが原因で起きた”事件”に複雑な感情を持ちながらも、「生きたい」と思う気持ちが、これでもかとばかり伝わってくるのではないだろうか。
高畑監督が生涯、追い求めていたのは「実写よりもリアルなアニメ」。実写では俳優たちの力を借りないと、そのリアルさを追い求めることができないが、アニメであれば監督が考える「リアル」を絵で実現することができる。本作は、その”完成形”といえるだろう。(高柳 哲人)

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