俳優・鈴木福(21)の10年ぶり単独主演映画「ヒグマ!」(内藤瑛亮監督)が23日から公開される。芸能界デビューから20年。

人生のほとんどを役者として生きてきたが、「俳優が続けられなくなったとしても、『もう人生終わりだ』とは思わないだろうなっていう謎の自信はある」と話す。「小さかった頃の自分が誇れる自分でありたい」と今の思いを語り尽くした。(瀬戸 花音)

 取材までの合間の時間に軽くステップを踏む姿もあった。のびのびと自然体で現場にいる鈴木は21歳。1歳で芸能界に飛び込んでから、20年の月日が経(た)った。「最近はワインにはまっていて、白より赤の方が面白いなと思うようになりました」と話す顔はすっかり大人だ。

 2011年、6歳で芦田愛菜と出演したドラマ「マルモのおきて」が大ヒット。主題歌の「マル・マル・モリ・モリ!」で紅白歌合戦に出場した。その後も「妖怪人間ベム」や「コドモ警察」などで幼少期から濃密なキャリアを築いてきた。

 それでも、この世界への「執着」について聞けば、「僕は何に対しても執着がない方だと思う」と答える。「絶対この仕事じゃなきゃいけないとも思ってないんです。何かがきっかけで、俳優を続けられなくなることって絶対あるじゃないですか。

その時に、もう人生終わりだとは思わないだろうなっていう謎の自信はあるんです。良くも悪くも。これ(=俳優)でやっていきたいっていうのはあるけど、これじゃなきゃいけないっていうのはあまりないかもしれないです」

 将来、役者を続けることが確定事項だったか、という問いにも「いや、全然」と即答。中学生の頃は「ちょっとフワッとしている時期だった」と振り返る。

 「中学生の時、親は『やめてもいい』と言っていました。僕自身、野球部に入っていましたけど、プロ野球選手になりたかったわけでもないし、かといって芸能界で『これがやりたい』というのが強くあったわけでもなかった」

 だが、同時に親からかけられた「でも、やめたらもったいないよね」という言葉が俳優継続への背中を押した。「今考えると、本当にその通りだと思います。続けることって何事も本当に大事だと思うんです」

 現在は仕事の傍ら、大学にも通う。将来の選択肢や交友関係、知識も含め、自らの可能性を広げるために進学した。「企画してプレゼンするみたいな授業もありますし、文章を書くことも増えました。自分の漠然とした思いを言語化して、自分がどう本質を捉えているのか、それを伝えるためにはこういう文脈よりもこういう方がすてきに書けるんじゃないかなど、昔だったら考えなかったことを考えられるようには間違いなく、なっていると思います。…あと、全然関係ないですけど、大学の授業で3Dプリンターを使えるようにもなりました(笑)」

 現在は前向きに役と向き合い、ひとりの人間として、そして俳優として一歩ずつ歩みを進めている。

「自分の中で『これをやりたい』っていうワクワク感みたいなものを持ち続けられたらなと思います。僕はずっとアクションが好きなので、アクション作品にもっと出たいなと思っています」と願望を語った。

 「ヒグマ!」は10年ぶりの映画単独主演作になる。「基本的にはどこにいても僕は変わらない」というが、「今回は主演ということで余計に現場を楽しんでいることを包み隠さずにいられたかな」と充実の表情を見せる。

 「闇バイトVSヒグマ」という対立構造を描いた内藤監督の最新作で、鈴木は夢を持ち大学進学を望むが、とある事情で断念した青年役。母を支えるため闇バイトに手を染めていくうちに、ヒグマと対決することになるという数奇な運命を背負った役どころだ。

 当初は昨年11月に公開予定だったが、クマ被害拡大の状況を受け、公開が延期された。新たな公開日が今月23日に決まったことに対して「胸をなで下ろしています」。作品の内容について「こんなにタイムリーな作品になると思っていなかったので、まさかという感じですが、リアリティーと、キャラクターたちのポップで笑える要素のバランス感が僕はすごく好きです。ただ面白い、ただ怖いという部分だけじゃなくて、闇バイトをすることになる理由であったり、してしまった時の罪悪感であったり、伝えたいメッセージが盛り込まれていると思います」と話した。

 人と人、人とヒグマとのサバイバルバトルが繰り広げられるが、鈴木が日常で恐れているものは「お化け…と遅刻、あと失言も怖いですし、週刊誌も怖いですね」と笑う。

 子役時代から、俳優としての夢は「仮面ライダーになること」だったが、その夢は22年の「仮面ライダーギーツ」出演で、すでにかなえた。

「仮面ライダーになれてから『夢』へのハードルが上がっちゃって。目標はあるんですけど…夢っていう夢は…いいお父さんになりたいってことぐらいですかね」。そう言って、はにかんだ。

 では、目標は何か。「ずっと自分の中でテーマにしているのは、小さかった頃の自分が誇れる自分であること。そうなれるように、とにかく前に突き進むしかないと思っています」

 あの頃の「福くん」は、今もこの先も「鈴木福」の中で生き続けている。

 ◆鈴木 福(すずき・ふく)2004年6月17日、東京都出身。21歳。1歳の時、NHK「いないいないばあっ!」に出演し芸能界デビュー。11年にフジテレビ系ドラマ「マルモのおきて」に出演し、人気に。同年、第62回NHK紅白歌合戦に史上最年少(企画枠除く)で出場。23年から日本テレビ系情報番組「ZIP!」の木曜パーソナリティーを務める。

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