ロック歌手のダイアモンド☆ユカイ(63)は2009年ごろ、男性不妊と診断された。当時はこの病気に対する世間の認知度も低く、「妻と二人三脚で地獄の黙示録だった」と語る。

不妊治療の末、10年に長女(15)、11年に双子の長男、次男(ともに14)が誕生。2男1女に恵まれた。治療の日々を振り返り、3人の子どもたちの近況などを聞いた。(中西 珠友)

 待望の第1子はユカイが47歳の時に誕生した。「感慨深さも喜びも、より大きくなりました」と、ひと言、ひと言をかみ締めながら語った。

 「子どもが生まれて生活はガラッと変わったけど、不妊治療の期間があったから、子育てで大変だった時期も乗り越えることができました」。長女が誕生した翌年には双子の男児にも恵まれた。「俺が一人っ子だから、やっと授かって(しかも)女の子。もう十分幸せだと思っていた。まさか、そのあと双子を授かるなんて。青天の霹靂(へきれき)でしたね」

 一般女性の妻とは09年に再婚した。妻が不妊かどうかを調べるため、病院に同行すると、思ってもみない結果が待っていた。

 「妻も高齢だったからしょうがねえなんて思って付き合って病院に行ったら、俺が原因だったっていうね…。痛くもかゆくもないし、普通だったからね。調べるまでは一切分からなかった」

 驚き、動揺もしたが「ファミリーを持つべくして結婚した」妻との約束を果たすため、不妊治療を決断。約2年間に及ぶ治療は、想像を絶するものだった。

 当時を「肉体と精神と金銭との三重苦」「地獄の黙示録みたいな感じ」と表現。「自分の中では10年くらい続いた感覚かな。もう、これ終わらないんじゃないかみたいな」。特に苦しかったのは精神面。「無精子症だったから精子を取り出す手術をする。自分の急所に注射を打つわけだから、怖い。いざやってみたら、看護師さんに(下腹部の体毛を)剃(そ)られるのが恥ずかしかった」

 不妊治療に励んでいた当時、実母を含めて理解者は少なかった。自らの不妊治療の経験をつづったエッセー「タネナシ。」を発売した際には「デリケートなことなので、マスコミには載せられませんと(周囲から)言われていた」ほどだった。

時代の変化とともにインタビュー、講演する機会は年々増えているが「まだまだ男性不妊に関して(の理解)は弱い。知った方が対処できるわけだし、もっといろいろな人が知った方がいいと思う。進んで検査に行けるような時代になってほしい」と、経験者だからこそ強く願っている。

 現在、長女は高校1年生になった。アーティスティックスイミングで五輪を目指したいという夢をかなえるため、数年前から妻と大阪に移住。2人とは別居生活を送る。

 「娘とはいい関係だけど、大阪に行っても、娘に会うにはまず一つ、妻というクッションがある。実は(僕がやんちゃしすぎて)『もう二度と家に来ないでください』と言われていて、出入り禁止(状態)になっていた」と告白。「最近やっと出入り禁止が解けて、娘に会いに行くことができた」

 ユカイはというと、長男、次男と3人暮らし。「にぎやかというよりは、ギスギスしている(笑)。2人は反抗期の真っただ中だから、言うことを聞かない。中学になったら変わってしまって、小学生の頃のようなかわいい関係(性)はもうない。

身長も(自分と)変わらないし、ひげ剃りでひげを剃っていたり、嫌になっちゃうよ」と矢継ぎ早に語ったが、ユカイなりの照れ隠しにも感じた。

 インタビュー冒頭も「すみませんね、全然大きなけがや病気をしていなくて」と申し訳なさそうに言ったが、音楽に出会ったのは中学2年の時、運動中に骨折したのがきっかけだった。

 「スポーツができなくなった時、友だちが貸してくれたレコードを聴いて音楽に目覚めた。当時はあんまり詳しくなかったし、興味もなかったけど、ビートルズを聴いて雷に打たれた。そこから自分の心の中にはビートルズがずっと生きている」

 高校2年生で初めてバンドを組み、大学在学中にプロを目指す決意を固めて中退。「RED WARRIORS」のボーカルとしてデビューし、第一線で活動を続けてきた。

 今年は同バンドのデビュー40周年、ソロデビュー35周年のメモリアルイヤーにあたる。「年齢的なもの、自分の気づきもあると思うけど、全ての困難、アクシデントがプラスに考えられるようになった。(今思えば)過酷な日々だったけど、全部初めてのことだったし、いい勉強になりました」。この年齢になって、不妊治療の日々をプラスに捉えられるようになった。

 「(自分の経験を)いろいろな人に知ってもらうために、自分が媒体として活動をすることが必要かなって。(検査も)簡単にできるから、健康診断でやってもいいんじゃないかな?」

 これからも積極的に発信を続けていくつもりだ。

 ○…ユカイは3月14、15日にロッキンミュージカル「シン・シャドウブラウン&ブラックパイレーツの冒険 Part2」(東京・有楽町のI’M A SHOW)を行う。昨年に続く開催で「コンサートだけ見てもゴージャスだと思うけど、ミュージカルも加わる。昨年よりグレードアップして世の中の風潮を捉えたような内容になっている」と自信を見せた。今年はソロアルバム「SING MY SOUL(仮)」を発売予定。ミュージカルだけでなく、音楽活動でも楽しませてくれそうだ。

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