馬トク報知で今年から始まった過去の名勝負を当時の記事を中心に振り返る【競走伝】。今回はモズアスコットが勝った2020年の根岸Sを取り上げる。

矢作芳人調教師が安田記念勝ち馬をダートに初投入し圧勝。フォーエバーヤングで米エクリプス賞も取った“世界のYAHAGI”の采配がさえた一戦だった。

 衝撃のダートデビューだった。モズアスコットは9か月ぶりにコンビを組んだルメールを背にゲートへ入ったが、タイミングが合わずにまさかの出遅れ。「出遅れてしまったが、すぐにハミをとって楽に流れに乗れた」と鞍上の言葉通り、慌てずに追走しながら、直線では砂の猛者を寄せつけない。

 馬場の大外から内へ切れ込みつつ、脚を伸ばし、重賞4勝の実力馬コパノキッキングをも飲み込んだ。1馬身1/4差をつけて飛び込んだゴール板。「強かった。直線の手応えはいつも通り良かった」。鮮やかすぎる二刀流のお披露目。ルメールは手綱から伝わった感触を満足そうに振り返った。

 矢作イズムの詰まった馬だった。

根岸Sは1年8か月ぶりの勝利となったが、その前の勝利は18年の安田記念。安土城S2着からの連闘だった。連闘でのG1制覇は1989年安田記念のバンブーメモリー、1998年阪神3歳牝馬S(当時)のスティンガー以来、実に20年ぶり3頭目。異色の采配でG1ウィナーへ導いた。

 そして、今回は芝G1馬のダートへの起用。「母系はダート(血統)で根拠はあった。フランケル産駒はダートは走らないと言われていたが、(勝って)証明できた」と芝&ダート重賞制覇に目を細める。安田記念勝利後は黒星が続いたが、思い切った采配が見事にはまり、見違えるような圧勝劇。矢作師は「なかなか芝のG1馬を使うのは勇気がいりました。まだ終わってないぞというところを見せたかった」と6歳馬の復活への道のりを振り返った。

 続くフェブラリーSもV。規格外の強さでクロフネ、アグネスデジタル、イーグルカフェ、アドマイヤドンに続くJRAでは史上5頭目の芝&ダートG1優勝を成し遂げた。

その後は同年末に現役を引退し、北海道新ひだか町のアロースタッドで種牡馬入り。フランケルの血をつなぐ貴重な存在となり、産駒のファウストラーゼンやエコロアルバが芝の重賞を制覇している。

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