◆ミラノ・コルティナ五輪 ▽フィギュアスケート ペアフリープログラム(16日、ミラノ・アイス明日ケートアリーナ)

 フィギュアスケートのペアで日本史上初めて金メダルを獲得し、新たな金字塔を打ち立てた三浦璃来、木原龍一組。日本を、ペア強豪国へ押し上げようとしている。

女子シングルで荒川静香が金メダルを獲得した2006年から、フィギュアスケートの発展を支えてきたのが「りくりゅう」の所属する木下グループだ。国内のカップル競技育成のため、選手の支援、そして環境作りを最前線に立ち引っ張ってきた。

 2014年ソチ五輪。五輪のフィギュアスケートで、初めて団体戦が採用された。日本は、2010年バンクーバー五輪で女子の浅田真央、男子の高橋大輔が表彰台に乗るなどシングルでは世界トップクラス。ただ、ペア、アイスダンスは力で劣っていた。日本連盟は、団体メダル獲得へカップル競技強化のため、木下グループへ支援を依頼。同社広報担当によれば、木下直哉代表は、ためらいなく引き受けたという。

 「木下(代表)が競技をサポートするポリシーとして『陽の当たらないところにこそ、支援を』という思いがあります。支援を決める前、木下は2008年の全日本選手権を会場で観戦し、シングルと比べると盛り上がりに欠けていたカップル競技の現状を目の当たりにして、支援を決意したそうです」

 アイスダンスのキャシー・リード、クリス・リード組のサポートから始まり、ペアでは高橋成美さんらが所属選手の先駆けに。現役では、木原龍一が2013年から木下グループの名を背負う。2人で活動するため、シングルと比較しても練習環境や時間の確保が難しいカップル競技。

支援も手探りから始まった。

 「金銭的な援助を始め、当初は選手が何を必要としているかをヒアリングするところから始まりました。以前は、海外拠点の選手にお米などの食料を送っていたりもしたそうです」

 京都・宇治市にある通年リンクの命名権を取得し、20年に「木下アカデミー」を設立。浜田美栄コーチをGMとし、包括的なトレーニング環境創りを目指す。一般で使えば、1枠90分で3万6000円かかるリンクの貸し切りを、1日最大7枠分確保。アカデミー事務局担当者は、シングルだけでなくペアやアイスダンスも十分な練習時間を確保できると説明する。

 「世界に通用する選手を育成するためには、よりよい練習環境を整えてあげることが最も重要でした。強豪国ロシアなどのように、世界で戦うための環境を目指したのが、木下アカデミーです。少数で全面を貸し切り、氷の上での時間を十分に取れる。バレエのレッスンも同じ館内で行うなど、少しずつ整ってきているように感じます」

 カナダで強化を行い支援を受ける「りくりゅう」は、22年北京五輪で日本勢初の7位入賞を果たすと、23年には世界選手権で優勝。アカデミー生の長岡柚奈、森口澄士組が今大会に出場し、日本で初めて複数ペアが五輪に出た。木下グループ、アカデミーだけでも6組のペア、カップルが活動し実り始めた支援。

同社は驚きを持って受け止める。

 「五輪に2組のペアが出るということは、まさに驚き。木下も『まさか』言っています。支援を始めた当初は、他の役員から『なぜ、カップル競技を』という声もあったそうですが、木下は信じ続けて支援してきた。ペア競技は、実績が出るまでに8年ほどかかると言われているようですが、ゆなすみはその半分以下の3季目で五輪出場枠を取りました。りくりゅうの存在、背中があってこそだと思いますが、木下はずっと信じて支援してきました」

 ミラノ五輪では、日本が2大会連続で団体銀メダルを獲得。「りくりゅう」はSP、フリーともに1位を獲得し、男女シングルと共にペアがチームの得点源となった。アイスダンスで強化の余地を残すが、カップル競技の強豪国として世界の仲間入りをしようとしている日本。同社は永続的なサポートを誓い、日本フィギュアの発展を願う。

 「ペアやアイスダンスをしたいということで、アカデミー入りを希望する選手も出てきました。これからも、カップル競技を国内で強化できる体制を整えていきたいです。そして日本の課題の一つとして、ペアやアイスダンスの指導者が少ないという点があります。

今活躍している選手たちが、いずれ木下アカデミーに帰ってきて、指導者として次の選手を育てるような環境も整えていきたい。大きな枠組みの中でフィギュアスケートと関わりたいという思いは木下の中にもありますので、長い目線で続けていくことができるかどうかは、我々に課せられた大きなミッションであると思います」

 りくりゅうが、ショートプログラム5位から劇的逆転優勝を果たしたフリー。木下代表も「木原君、13年前は想像できなかったよ。璃来ちゃん、木原君を支えてくれてありがとう。そして、2人とも世界一、頑張ったよ。ただただ、ありがとう」と万感のコメントを寄せた。試合後、木原は「自分たちが本当に困った時に、必ず助けてくださる方々がたくさんいらっしゃった。助けてくださった方々に、本当に感謝したい」。確かな支えを力に、日本フィギュア界の未来を切り開いた。(大谷 翔太)

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