ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケートで、日本勢は1大会最多となるメダル6個を獲得した。最終種目の女子では、坂本花織(シスメックス)と中井亜美(TOKIOインカラミ)が銀、銅メダルを獲得。

千葉百音(木下グループ)も4位と健闘した。2010年バンクーバー五輪男子代表の織田信成氏(38)が、女子フリーに出場した3選手を評論した。

 日本選手は3人とも、それぞれの個性が花開いた素晴らしいフリーでした。最終グループの日本勢として最初に滑った千葉選手は、前のグループからノーミスの演技が続きフリーで140点代の高得点が並ぶ中、その流れに乗り素晴らしい演技を見せました。苦手としていたサルコーやループといったエッジジャンプを見事に成功させ、大きなミスなく演技終盤を迎えた事で、最後のステップシークエンスとコレオシークエンスでは「ロミオとジュリエット」の曲に合わせ、今季1番情感のこもった演技を見せました。出来栄え点だけでなく、高い演技構成点も獲得できました。ジャンプが3つほど、僅かな回転不足という判定があり、その点がメダルを分けたポイントとなりましたが素晴らしい演技でした。

 坂本選手は、団体戦に続きに圧巻の演技でした。後半の3回転フリップ―3回転トウループの連続ジャンプが単独ジャンプになり、3回転フリップは前半に跳んだジャンプと合わせ、同じ2本の単独ジャンプとなりました。同じ種類・回転数のジャンプを繰り返す場合、どちらかコンビネーションにしなければなりません。単独2本を行った場合、2本目は基礎点が70%まで点数が減るため、坂本選手は基礎点からの減点と、つける予定だった3回転トウループの得点を失う形になりました。こうなった場合、坂本選手は最後の3回転ループでコンビネーションジャンプをリカバリーすると思われますが、仮にここで2回転トウループをつけてしまうと、プログラムの中で3回2回転トゥループを行うことになり、3本目を跳んでも0点になります。

ループを単独で綺麗に跳ぶ事により、高い出来栄え点を引き出したという、ミスにも冷静に対処できていたように思います。団体戦では、持ち前の明るさで日本チームを引っ張り、個人でも堂々の銀メダル。力が出せず涙しても銀メダルを獲得出来たのは、彼女の今までのたゆまぬ努力と、決して諦めない心の結晶であると思います。

 中井選手は、ショートに続き伸びやかな演技が印象的でした。冒頭のトリプルアクセルでは、やや軸は傾いたものの、そこからしっかりと着氷。彼女の体幹の強さと、空中でのバランス感覚の凄さを感じました。また、中井選手が今シーズン、ショートとフリー両方でクリーンにトリプルアクセルを決めたのは、このオリンピックが初めてです。大一番で決め切る気持ちのコントロールが光っていました。続くコンビネーションジャンプのセカンドジャンプで回転が開いてしまいましたが、大きなミスはそこでとどめ、最後まで彼女らしい笑顔で滑り切りました。フリーだけで見ると9位ではありましたが、ショート1位の貯金と合わせて見事、日本女子最年少での銅メダルです。元々、フリーではトリプルアクセルを2本組み込む事の出来る選手。まだまだポテンシャルがあり、スケーティングもシニアの世界でさらに磨かれていけば、もっともっと伸びていくでしょう。

 団体戦を含めて、日本勢は6個のメダルを獲得し、過去最多のメダル数となりました。これは、今回ミラノに来られなかった選手を含め、選手同士の国内での切磋琢磨があり、レベルが上がり続けている証拠です。僕の予想として、次の4年間は、よりスケートの美しさを追求するルールに変わってくるように思います。大まかなルール変更も大切ですが、スケートを知らない人達が理解しにくい回転不足や、ジャンプの踏切などにはAIを導入するなど、細かな部分での採点の明確化が急務であると感じます。(2010年バンクーバー五輪代表)

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