ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の開幕を控え、中欧チェコがかつてない野球熱に包まれている。

 現地で医師を目指しながら、その熱狂を肌で感じている日本人がいる。

カレル大学第一医学部4年生の村澤玖宣さん(23)が急速に変化するチェコのスポーツ事情と、日本との深いつながりについての思いを語った。 「スポーツの王様は今も昔もアイスホッケーです。1998年の長野五輪での金メダルは今も伝説ですから」。国技とも言えるのは、アイスホッケーやウインタースポーツだが、その強固な牙城に「野球という新たな風が吹き込んでいる」と語る。

 転換点は2023年のWBCだった。

 「消防士や医師といった本業を持つ選手たちが、日本でひたむきに戦う姿が国民の心をつかみました。人口1100万人のチェコ国内での視聴者数は約84万人に達しました。これは当時、マイナースポーツだった野球としては、極めて異例の数字です」

 その熱狂は、具体的な数字となって表れている。チェコテレビ・スポーツチャンネルは今回のWBC全18試合の生中継すると決めた。テレビ局が用意した東京ドームの観戦チケット1000枚はすべて完売という盛況ぶりだ。

 村澤さんも野球少年だった。二松学舎大附属高時代は福岡ソフトバンクホークスの秋広優人内野手が同級生で、同窓には大江竜聖投手、シカゴ・カブスの鈴木誠也外野手らがいた。

なぜ、チェコで医学を学ぼうと考えたのか。

 「高校時代に留学して、英語の重要性を痛感しました。医師への夢と英語、その両方を高いレベルで追求できる場所を探した結果、全授業を英語で行うカレル大にたどり着きました」

 英語、チェコ語を駆使して患者と向き合う臨床実習の日々を送る。チェコ代表を率いるパベル・ハジム監督が、精神科医として開業していたことを知り、「医学とスポーツの交錯」という不思議な縁も感じた。

 チェコ野球の象徴はマレク・フルプ選手だ。

 「2025年に読売ジャイアンツに入団し、現在メキシコ野球連盟(LMB)という新天地で戦っています。アジアとメキシコ、両方のトップリーグを経験する初のチェコ人選手として、その活躍に期待がかかりますよね」。欧州で野球と言えばオランダ、イタリアが二強として知られる。オランダはカリブ領出身者が多く、イタリアはイタリア系アメリカ人で構成されるが、チェコ選手のほとんどは国内出身で構成される。

 先月21日からは7日間、宮崎県三股町での事前合宿を行い、練習試合を行った。日本とは10日に3年ぶりに対戦する。日本では、チェコ代表とコラボしたビールが完成するなど、盛り上がりを見せている。

 「前回大会前にもお世話になった思い出の地、宮崎から新たな挑戦が始まりました。チェコで育まれた野球文化が、再び日本のファンを驚かせるかもしれません。私は専門知識と多角的な視点を持ち、患者の生活の質(QOL)向上に貢献できる医師を目指していますが、野球がつないでくれたチェコと日本の絆も見守り続けたいと思います」

 チェコは6日午後7時から、東京ドームで韓国との初戦を迎える。

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