◆WBC 1次ラウンドD組 イスラエル5―0ニカラグア(8日・ローンデポパーク)

 ニカラグアは8日(日本時間9日)のイスラエル戦に0―5で敗れ、1次ラウンド(R)の敗退が決まった。同国代表を率いる76歳の名将ダスティ・ベイカー監督は試合後の会見で、珍しく語気を強めた。

 「簡単に引き下がりたくはない。最後まで戦い抜いて散りたい。それが野球であり、人生というものだ。最後の息を引き取るまで戦い抜く」

 日本人記者を見れば「妻が大谷のファンなんだよ」と自ら声をかけてくれるほど温厚な人柄で、笑顔が絶えない指揮官が見せた厳しい表情にニカラグアという国への想いの強さが感じられた。

 7日(同8日)にオランダに3―4で破れ、開幕2連敗と追い込まれた。この日の試合前の会見では「崖っぷちの状態だが、まだ準々決勝に進めるわずかな可能性が残っている。勝てばチャンスはある」と話し、「昨夜(の敗戦)は大きかったが、父が聖書には夜に涙を流しても、朝に目が覚めれば笑顔になれるという言葉があると言っていたのを覚えている。昨夜は泣いていたが、今日は笑っているよ」と明るく前を向いていたが、敗戦後には悔しさを滲ませた。

 メジャーリーグで26年間にわたって指揮をとり、通算2183勝をマーク。2022年にアストロズをワールドチャンピオンに導いた後に勇退したベテラン監督。23年に初めてに本大会出場を果たしたが、まだ1勝もしたことのないニカラグアの監督を引き受けた理由は多々あったという。中でも大きかったことが、ニカラグアの人々の心の豊かさだった。

 「私は彼らから多くのことを学んだ。彼らは非常に誠実で謙虚で心の広い人たちだ。私にとって、あの国全体が心の広いものに感じられる。多くを持たない人々でさえ、すべてを差し出そうとしてくれる。それを思うと、こちらももっと彼らに与えたくなる」

 ニカラグアはプロ野球に必要な道具がすべて揃う状況ではないほど格差がある。代表を率いることを決めた後、ベイカー監督は選手たちがプレーしやすいように高価な用具を寄付した。すべての問題を解決できなくとも助けにはなる。

 「彼らは私たちほど多くのものを持っていないかもしれないが、ストレスのない社会にいる。アメリカにはすべてがあるが、誰もがストレスを感じている。私にとってはストレスのない状況で時間を過ごせるのが良いことなのだ」

 今日の敗戦によって予選敗退が決まったが、9日(同10日)ベネズエラとの試合が残っている。D組首位突破を目指すベネズエラにとっては絶対に勝たないといけない試合であり、ニカラグアにとっては「WBC初勝利」を挙げる今大会最後のチャンスである。

 「試合がある以上、何がかかっていようと勝つためにプレーする。

私は首位のチームにも、シーズンの最終戦を迎えた最下位のチームにもいたことがあるが、当然ながら良い形で帰路につきたいものだ」

 名将が率いるニカラグアが強豪ベネズエラとどう戦うのか、楽しみだ。

(村山みち通信員)

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