第102回箱根駅伝(1月2、3日)で3年連続9度目の優勝を果たした青学大の原晋監督(59)の妻で寮母の美穂さん(58)に、大相撲・二子山部屋の女将(おかみ)の竹内侑加さん(41)が“弟子入り”した。駅伝と相撲。

競技は異なるが、アスリートをサポートする立場は同じ。大阪開催の春場所の留守番期間中を利用し、東京・町田市の青学大選手寮で「寮母一日体験」。大学駅伝界の“横綱”青学大を支える美穂さんと交流し、互いに学び合った。(取材・構成=竹内 達朗、網野 大一郎)

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 最近12年で優勝9回。箱根路の“横綱”青学大を寮母として支える美穂さんは、相撲部屋の女将とほぼ同じだ。選手と一つ屋根の下で暮らし、生活面をサポートする。04年に原監督が青学大の指揮官に就任したと同時に美穂さんも寮母に。4月で23年目を迎える。一方の侑加さんは二子山親方(元大関・雅山、48)が藤島部屋から独立し、二子山部屋を創設した18年に女将となった。すでにロシア出身で幕内の狼雅、幕下の三田、三段目の生田目らを育てるなど8年のキャリアを重ねているが、向上心を持って、美穂さんに“弟子入り”を志願した。

 青学大町田寮の朝は早い。午前5時45分から朝練習がスタート。

ほぼ同時刻に、鶴貝彪雅(ひょうが)シェフ兼栄養コーチ(27)と美穂さんは朝食の準備を始める。朝練習を終えた選手は、おなかを空かせて続々と食堂に集まってくる。美穂さんは選手と気軽に会話し、その雰囲気はまさに大家族。侑加さんは寮母の仕事を手伝いながら、選手との接し方などを観察した。

 仕事が一段落した後、美穂さんと侑加さんは姉妹のように笑顔で語り合った。

 侑加さん「夫婦円満の秘訣(ひけつ)は何ですか?」

 美穂さん「最初の質問がそれ? それに私たちは夫婦円満か分かりませんよ(笑)。強いて言えば秘訣は『諦め』かな。私たちがケンカして雰囲気が悪くなると、皆が困りますから。侑加さんは親方と夫婦円満ですか?」

 侑加さん「美穂さんがおっしゃる通り、私たちがケンカすると、力士に気を使わせてしまいます。夫婦円満を心がけています。寮母として一番に心がけていることは何でしょうか?」

 美穂さん「私は陸上の指導はできません。というよりも私が入ってはいけない領域。

その分、競技以外の生活面で選手が楽しく暮らせるように心がけています」

 侑加さん「グラウンドでは原監督は厳しいのでしょうけど、寮の中では選手とフランクに接していることに驚きました。相撲界では親方と弟子は、原監督と選手ほどフランクに話しません」

 美穂さん「監督が相撲が大好きなので一緒に両国国技館に行くこともあります。お相撲さんの気迫はすごい。とても刺激になります」

 侑加さんの長男・雅功君は長距離ランナーで強豪の千葉・八千代松陰高1年生。侑加さんは母親の目線でも美穂さんに質問した。

 侑加さん「伸びる選手の親御さんの共通点があれば、教えてください」

 美穂さん「全て当てはまるわけではないけど、お母さんが全て面倒を見てあげるより、少し放任くらいの方がいいかもしれません」

 美穂さんも侑加さんもほぼプライベートがない空間と時間で生活している。それでも日々、充実感に満ちているという。

 美「選手が楽しそうに笑っている姿を見ることが一番、楽しい」

 侑加さん「力士が強くなっていく過程を、目の前で見られることが喜びです」

 箱根道と相撲道。選手と力士は、優しい寮母と女将に見守られて、きょうも己の道を突き進む。

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 〇…好角家の原監督は二子山部屋女将の侑加さんを大歓迎した。「さすが松田聖子を生んだ久留米市(福岡県)出身、きれいですね!」と原監督は妻の美穂さんを前にして満面の笑みで話した。「今度、ぜひ、稽古を見にいらっしゃってください」と侑加さんに誘われると、原監督は即答。

「必ず、行きますよ。雅山と言えば名力士。異種競技から学ぶことは多いし、部屋とチームの運営などについても、二子山親方と意見交換したい」と前向きに話した。

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