J2藤枝は21日のアウェー福島戦に向け、17日に焼津市内で調整した。今季就任した元日本代表の槙野智章監督(38)が取材に応じ、スタメン選手の決め方について明かした。

今季は若手を積極的に起用し、その采配が結果にもつながっている。

 3連勝を飾った前節の大宮戦では、大卒ルーキーのFW真鍋隼虎(明大)をワントップに据え、MF三木仁太(関大)を2シャドーの一角に起用。MF中村優斗(立正大)、今季加入のU―23日本代表DF永野修都ら、若い選手が並んだ。中でも思い切った起用だったのが、これまでベンチ入りもしていなかった柏ユース出身で加入2年目の19歳GK栗栖汰志の先発だ。槙野監督は「汰志の目つきがすごく良かったんですよ」と理由を明かす。練習内容も踏まえ、試合前々日(12日)に会話した際にも「喋っている時のテンポが良く、すごくリラックスしていた」と好感触を得ていたという。槙野監督は現役引退後、藤枝の監督に就任するまでの3年間、タレント活動にも力を入れていた。軽妙なトークを披露してきた指揮官ならではの観察眼もある。「コミュニケーションを取った時の感覚ってすごく大切。力が入りすぎている人は、あまりうまく話せない場合も見てきた」と説明した。

 前節対戦前の順位は藤枝がEAST―Bグループ5位、大宮が2位。その強敵相手に栗栖はシュート20本を浴びながらも1失点で踏ん張った。

特別大会でJ3クラブも混在する中、なぜ格上相手で起用したのか。その理由の一つが「あえて難しい状況で出す」という考え方だ。

 背景には自身の現役時代の経験がある。J1リーグでレギュラーをつかんだ試合を思い出していた。広島ユースから昇格して2年目の2007年8月1日、アウェーの浦和戦だ。相手サポーターの大きな圧力の中、プロキャリアで初先発フル出場を果たした。「一番強いと言われているチームのアウェーで初めて出るのは相当なものがある。それが監督からしてみたら一つの賭け。良ければパーンと伸びるし、悪ければもう一度チャンスを待とうとなる。強いチームのアウェーという難しい条件の中で結果を出せば、本人の自信になる。一つのプレー、一つの勝利がきっかけで選手は変わる」と言葉を続けた。

 藤枝の資金力はJリーグクラブの中でも多くはない。

その中で須藤大輔前監督が起用していなかった選手にも「原石はごろごろいる」と見ている。磨き上げることでチーム力を高め、将来的には移籍金によるクラブ強化にもつながると考えているという。Jリーグきっての「お祭り男」と言われる指揮官だが、その采配の裏には確かな信念があった。(伊藤 明日香)

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