◆明治安田J1百年構想リーグ ▽第7節 浦和1―1(2―4)柏(18日・埼玉スタジアム)

 90分を終え、PK戦に突入すると、リカルド・ロドリゲス監督は選手に問いかけた。

 「自信のある選手はいるか」

 PK戦のキッカーは、監督からの指名制か、選手の自主性に委ねる立候補制に二分されるが、最終的にロドリゲス監督は立候補制を選んだ。

 選手には直前まで挙手による立候補制であることは伝えられておらず、その場で初めて知った。その中で、真っ先に手を挙げたのはFW小見洋太。「(PKの)練習は新潟時代からかなり取り組んでいるので、蹴るチャンスがあれば蹴ろうという気持ちでいた」。PKが得意な選手は、という問いで、チーム内の多くの選手から名前が挙がる小見が、1番手となった。

 2番目に手を挙げたのはDF山之内佑成。個人的に山之内がPK戦の2番手を務めたことは驚きだったが、本人の希望に他ならなかった。「こういう舞台で蹴られるのは、自分としてもいい経験になると思った。決められる自信があったので手を挙げた」。なぜ、自信があったのか。理由は「特にない」というが、「どんな舞台でも決められる、と勝手に思っている。だから手を挙げた」と、大卒新人らしからぬ回答だった。

 一方で、乗り遅れていた選手もいた。

4番手で蹴ったFW瀬川祐輔だ。「まさか、挙手制だとは思わなかった。(指名制が)普通だと思っていたが、みんなすごい手を挙げていた。その中で俺は全然手を挙げていなかった」。ただ、指揮官の中では瀬川が蹴るのは確定事項だったようで、「4か5か、どっちだ」と問いかけられたという。本人は5番手で蹴るつもりも、FW垣田裕暉が5番手を希望したため、4番手になった。かくして、1番手は小見、2番手は山之内、3番手はMF戸嶋祥郎、4番手は瀬川、5番手は垣田に決まった。

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 この試合のPKで大きな壁となったのは、浦和の応援団による圧力。ゴールの真裏で浦和の応援団による旗振りが、まるで生き物のように揺れ動き、柏の選手にプレッシャーを与えた。山之内も「迫力がすごかった。ずっと目の前でちらつく」と振り返る。

 瀬川も「あのゴール裏は脅威だった」と明かす。

川崎に在籍していた2023年の天皇杯準決勝で新潟と対戦した際も、同様の経験をしており「あの旗ぶんぶんが苦手。新潟もすごかった。あのときは天皇杯というのもあってくらくらしたが、(この試合も)そのレベル。プレッシャーに感じた」。瀬川は“旗攻撃”によるプレッシャーに慣れるため、PK戦中はずっと浦和の応援団の方を眺め、目を慣らしたという。

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 「アウェーなので嫌だったが、自分に集中することを意識して蹴った」という、1番手の小見は危なげなく成功。「まだ職人なんていうレベルではない。いずれ職人になれるように練習をしたい」と謙遜するが、小刻みにステップを取る独特なルーティーンから確実に決める様は、まさに職人技。「(ルーティーンは)何も意識はない。駆け引きもない。ただ、自分のリズムで蹴っている」というキックで好発進した。

 2番手の山之内は、浦和応援団によるプレッシャーは感じつつも「ただ、楽しむことだけ考えていた。

緊張よりはワクワクが強かった」と強調。強心臓ぶりを遺憾なく発揮し、GK西川周作の逆をついた。

 GK小島亨介が浦和の3番手のMF早川隼平のキックを好セーブで阻むと、続く4番手のDF宮本優太のミスも誘った。そして、勝利がかかった状況で、4番手の瀬川に回った。確信に近い、自信があった。「西川さんが絶対あっちに飛ぶのは分かっていて、外す気はしなかった。読んでいたというか、勘。絶対あっちに蹴ったら入るだろうなと思っていた」。事前にイメージトレーニングをしたおかげか、リラックスしてPKに挑み、白星を決定づけた。瀬川は「去年もPKを蹴っているし、自分の中で得意になりつつある。自分が蹴って勝つ、というシチュエーションになって良かった」と喜んだ。

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 チームは3戦ぶりの勝利で、今季2勝目。

開幕から調子が上がらず、負けが続いているが、この日はDF山之内佑成の3バック右での起用、大卒新人で183センチの大型ボランチの島野怜がデビューするなど、今後への明るい材料も多くあった。

 勝ち点2をつかんだが、あくまで目標は90分での勝利。瀬川は「欲を言えば、(勝ち点)3でなければダメかな。2じゃ足りない。3を取れる力もある。今日はポジティブに捉えていいと思うが、3は必要。今日はひっくり返さないといけない試合だった」と、気を引き締めた。この勝利をきっかけに、上位返り咲きを狙いたい。(浅岡 諒祐)

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