27日に開幕を迎える今季のプロ野球。3年連続Bクラスに沈んだ西武の7年ぶりリーグ制覇へ、誰よりも熱いエールを送るのが歌手・松崎しげる(76)だ。

1979年にリリースされた「地平を駈ける獅子を見た」はチームの黄金期を支え、今なおファンから愛される球団歌。芸能界を代表するレオ党であり、巨人ファンでもある元高校球児は、2008年を最後に遠ざかる2球団による日本シリーズを待ち望んでいる。

 取材場所に現れた松崎は、西武から毎年贈られるというグラウンドコートを身にまとっていた。右腕には「MATSUZAKI」の刺しゅう。トレードマークである黒々とした顔つきから笑顔がはじけた。

 「歴代のユニホームも色違いでありますね。今の選手たちが生まれる前から歌っているんだから」

 東京生まれで巨人ファン。自身も高校まで白球を追った松崎は79年3月、西武の球団歌「地平を駈ける獅子を見た」のボーカルとして起用された。

 「ちょうど30歳の年かな。高校野球経験者、一番元気がいい男、声がでかいやつ、ということで阿久悠さんと小林亜星さんが僕に白羽の矢を立てた。それまで球団歌、応援歌は合唱隊とか音楽大のコーラスグループが歌ってたんですよ。ソロ歌手として初めて12球団で歌ったのが僕。

そういう意味ではものすごくうれしかった。ピッチャーマウンドの少し前で国歌斉唱と『地平―』を歌った時の感激というか…歌い手冥利(みょうり)に尽きるというかね。夢の中の夢みたいな感覚。自分が子どもの頃にあこがれた選手たちが監督になったり、球場内で一緒にいられる喜びはひとしおだった」

 リリース後、西武は82年~94年の13年間で11度のリーグ優勝と8度の日本一を達成。巨人とは83年、87年、90年、94年に日本シリーズで対戦し3度破った。「地平―」は黄金時代を後押しした一曲として、今なおファンから愛され続けている。

 「その時代(黄金期)は歌いながらハッキリ覚えてます。日本シリーズは一番いいところを一番近くで見ていた。わがライオンズと大好きなジャイアンツが戦うというのは、自分にとっては最高の青春でしたね」

 印象深いシリーズとして挙げたのは87年だった。西武が日本一へ王手をかけて迎えた本拠地での第6戦。2―1とリードした8回2死一塁の場面で、辻発彦が中堅・クロマティの緩慢な守備の隙を突き、単打で一塁から一気にホームイン。一連のプレーは「伝説の走塁」として語り継がれている。

 「クロマティは僕の親友でもあるんですよ。マイアミの家まで行った時は彼のスタジオで一緒に歌って。でも、あの緩慢プレーは…。そういうことも起こる、ものすごい試合だったな」

 3年連続Bクラスからの巻き返しを狙う今季の西武。今井達也投手がポスティング申請で米アストロズへと移籍したことはチームにとって戦力ダウンだが、同じくメジャー移籍を目指した高橋光成投手は残留。DeNAからフリーエージェント(FA)移籍で加入した桑原将志外野手の存在も大きい。

 「自分はヤングライオンズという言葉をよく使うんだけど、一時期の日本ハムみたいなもんでね。野球の仕方、勝ち方がだんだん分かってきていると思うので。やってくれますよ。今井くんがいなくなった部分はあるけど、光成が頑張ってくれると思うし、隅田(知一郎投手)もいる。トレードで来た選手はある程度数字が読めるし、良い選手はものすごくそろってるんだよね。ネビン(内野手)にしたって今年は去年以上にガンガン打つだろうし。

夏まではレギュラーを固定するんじゃなくて、その日その日で調子の良い選手を。ライオンズの新しい力をいろんな部分で試してほしい」

 特に活躍を期待するのは、華麗な身のこなしと広い守備範囲でレギュラーへと定着した滝沢夏央内野手。親交のある前監督・松井稼頭央氏に姿をだぶらせる。

 「見ていると本当に忍者みたい。絶対に活躍してほしい選手。ファン心理としては松井稼頭央のようなすごいプレーを、滝沢くんに守備で魅せてほしい」

 願うは7年ぶりのリーグV。その先に思い描くのは、08年以来となる巨人との日本シリーズだ。

 「もちろん! やっぱり一番面白いもん、僕はね。ライオンズとジャイアンツが一緒にやってくれたら。伝統の一戦的な部分が自分にずっとあるんだよね。だから本当に巨人にも頑張ってほしい」

9・6「黒フェス」で全力投球誓う

 日本記念日協会が認定した「松崎しげるの日」である9月6日には、今年も音楽フェス「黒フェス~白黒歌合戦~」を主催予定だ。今年で12回目の開催となるが「11月に喜寿だけど、自分の持っているものを見せられる唯一のフェスだから」と気合十分。

「お客さんの前に出ると100%が110%、130%になるんでね。野球選手だって球場に行けばファンの後押しですごいプレーができちゃう。自分でも楽しみ」と全力パフォーマンスを誓う。

 過去にはブレイク前の「新しい学校のリーダーズ」が出演。「また原石を見つけてこないといけないし、いろんなジャンルから呼びたいなと考えてます。祭典でもあるし」と構想を膨らませた。現在温めているアイデアは松井稼頭央氏との共演。「ステージでキャッチボールしたいね。まったく違ったことでも面白いと思うんですよ。歌? 歌は聴いたことねえなぁ」と笑った。

 ◆松崎 しげる(まつざき・しげる)1949年11月19日、東京・江戸川区生まれ。76歳。

日大芸術学部在学中にバンド「ミルク」を結成し、70年に歌手としてソロデビュー。77年に発売した代表曲「愛のメモリー」は同年の日本レコード大賞歌唱賞を受賞。ドラマ「噂の刑事トミーとマツ」「ケータイ刑事」シリーズに出演するなど俳優としても活躍。97年に23歳年下の一般女性と3度目の結婚。98年に長男、00年に長女、07年に次女が誕生した。

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