◆第63回愛知杯・G3(3月22日、中京競馬場・芝1400メートル、良)

 第63回愛知杯・G3(中京)は22日、12番人気のアイサンサン(幸)が重賞初制覇。これが初白星の橋田宜長(よしたけ)調教師(37)=栗東=は、開業から19日で史上2位のスピード重賞V記録となった。

 驚異の勝負根性に火がついた。ラスト100メートル手前。逃げるアイサンサンに好位のソルトクィーンが外から襲いかかる。馬体が合う。勢いは外。一度は前にも出られた。普通なら完全に負けパターンだが、併せ馬になると再び伸びた。幸は右腕でステッキを振り下ろし、左腕で手綱を目いっぱいに押す。すべてを絞り出すように、全身を使ったフォームで脚を伸ばすと、最後は頭差だけ前に出ていた。

 「よく盛り返して、頑張ってくれました」と幸は相棒をたたえた。その勝利を満面の笑みで出迎えたのが橋田調教師だ。4日の開業から9戦目。

初勝利が重賞は史上5人目。開業から19日での重賞制覇は歴代2位のスピード記録だ。「(定年引退した)佐々木(晶三)先生にうまく引き継いでいただいて、こういう素晴らしい贈り物を頂いたなという感じです」と感謝の言葉を口にした。

 経験を生かした。アイサンサンと向き合ううえで重ね合わせたのが、同じキズナ産駒で中竹厩舎の助手時代に携わったアリスヴェリテだった。「キズナ産駒らしい芯の強さがあるんですよね。追い詰めすぎず、甘えさせすぎずでやってきました。アリスヴェリテと一緒にやってきたことが勝因の一つですね」とうなずく。

 幸はJRA重賞50勝目だが、節目という以上に大きな重みがあった。昨年11月の落馬事故から先月に復帰し、初の重賞勝利。落馬後に「このまま辞めようかな」と家族に告げたこともある。「けがが続いて、心が折れていたけど、勝たせていただいて、また頑張ろうという気持ちになりました」と50歳のベテランは前を向いた。

多くの笑顔と歓喜を運んだ逃亡劇。尾張の地に愛が燦燦(さんさん)と降り注いだ。(山本 武志)

 アイサンサン 父キズナ、母ウアジェト(父シンボリクリスエス)。栗東・橋田宜長厩舎所属の牝4歳。北海道新ひだか町・株式会社サンデーヒルズの生産。通算成績は12戦5勝。重賞初制覇。総獲得賞金は9259万9000円。馬主は岡浩二氏。

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