愛知・名古屋アジア大会(9~10月)に臨む競泳日本代表が23日、都内での会見で発表され、男子は日本選手権で平泳ぎ3冠を達成した17歳の大橋信(枚方SS)や松下知之(東洋大)ら18人、女子は池江璃花子(横浜ゴム)や35歳の鈴木聡美(ミキハウス)ら17人の計35人が入った。評論家の松田丈志氏が同選手権を総括した。

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 今大会を通して、5つの日本記録(タイ含む)が樹立された。近年、日本選手権で日本記録コールを聞く機会は少なかったが、日本新が出たことで盛り上がった大会になったと言えるだろう。そして、男子自由形では村佐達也、松元克央選手の新旧エース対決など、若手とベテランのつばぜりあいも見所だった。2028年ロス五輪に向けた世代交代も、また一歩進んだように感じた。

 若手選手の中で最も印象的だった1人が、男子100メートル(M)平泳ぎで日本新記録を樹立し、3冠を達成した17歳の大橋信選手だ。200Mでは記録の更新こそならなかったが、前半を59秒台で折り返す積極的なレースをみせた。指導する太田伸コーチによれば、ハイペースなレース展開は本人の意図だったという。まるで、北島康介さんを彷彿とさせるような泳ぎだった。

 北島さんは平井伯昌コーチの下で中学、高校時代から、後半の疲れを気にせず前半からとばすレースをしていた。100Mなら、当時の50Mの日本記録に迫るようなタイムで折り返し、後半で体力が持たなくともそのスタンスを崩さなかった。大橋選手からは、小さくまとまることなく「上に行くんだ」という意識の高さを感じる。今回は後半でバテたが、この経験から見える世界もある。

持久力もまだまだ伸ばすことができ(2分)5秒、4秒台も十分視野に入るだろう。

 女子では、800M自由形で梶本一花選手が22年ぶりに日本新記録を更新した。梶本選手は、男子800メートル自由形で日本新の今福和志選手や、大橋選手と同じ所属(枚方SS)だ。太田コーチは猛練習で知られるが、ハードワークを重ねる選手が結果を出した大会になった、という印象も持った。女子のカテゴリーで見れば、選手層が薄い点に課題を感じる。競泳の魅力を高め、伝えることで、競技の底上げを図る必要性もあるだろう。

 今年は8月にパンパシフィック選手権、そして9月には国内でのアジア大会(名古屋)が控える。特にアジア大会は、コロナ禍で無観客だった21年東京五輪が行われた東京アクアティクスセンターでの開催となる。多くの観客が入り、そこで1人でも多くの日本選手が活躍することで、無観客だった東京五輪のリベンジを果たして欲しい。

 「アジアの五輪」と言われる、4年に一度の国際大会。日本選手に大きな声援が送られる瞬間は、アスリートとして最も喜びを感じる瞬間と言っても過言ではない。そして日本新記録が出た際の会場の一体感と歓声は、当事者にとっては今後への何よりの原動力となり、その姿を見た別の選手は「次は、自分が出したい」と気持ちをかき立てられる。

28年ロス五輪に向け、特に若手選手にはその刺激を感じて欲しい。日本競泳界のレベルアップのためにも、アジア大会での活躍を期待したい。(北京、ロンドン、リオ五輪3大会連続メダリスト)

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