就職活動は、本来は企業と個人が対等に向き合う場のはずだ。しかしその前提が、静かに崩れ始めている。

株式会社KiteRaが直近1年以内に正規雇用(正社員)を希望して就活を経験した1180人を対象に行った調査では、新卒就活生の41.0%が「明確なセクハラ」を経験、さらに67.7%が何らかの不快・不適切な言動を受けたと回答した。数字は、面接という場が必ずしも安全ではない現実を示している。

 特徴的なのは、その対抗手段だ。新卒就活生の62.6%が、面接やOB訪問で無許可の録音・記録を行った経験があると回答している。「常に記録する」25.8%に加え、「不安なときだけ」が36.8%と、警戒が日常化している。企業側から見ればルール違反ともなり得る行為だが、就活生にとっては自己防衛の延長線上にある。

 一方で、企業の対応が進んでいないわけではない。新卒の52.9%は相談窓口の存在を認識し、74.8%は選考中にコンプライアンス方針の説明や提示を受けている。それでも不安が払拭されないのは、制度と現場のあいだにギャップがあるからだろう。ルールがあっても、接点の持ち方次第でリスクは残る。

 その象徴が、連絡手段への不満だ。新卒就活生が企業に最も求めたのは「連絡手段の公式化(個人LINE・SNSの禁止)」で45.0%。

加えて「面談時の同席やオンライン化」「時間や場所のルール化」も上位に並ぶ。つまり問題は個人の資質ではなく、どう接触するかという設計そのものにある。

 背景には、デジタル化による境界の曖昧さがある。LINEやSNSは利便性が高い一方で、公私の線引きを崩しやすい。個人アカウントでのやり取りは、断りづらさや圧力を生みやすく、ハラスメントの温床にもなり得る。だからこそ就活生は、仕組みとしての「距離」を求めている。

 2026年10月からは、求職者へのセクハラ防止措置が企業に義務付けられる。だが今回の調査が示すのは、注意喚起や研修だけでは不十分だという現実だ。面接の安全性は、個人の善意ではなく、設計されたルールによって担保されるべきものへと変わりつつある。録音という行為の広がりは、その転換点を静かに示している。

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