◆米大リーグ ブルージェイズ5ー2アスレチックス(29日、カナダ・トロント=ロジャーズセンター)

 巨人時代の岡本和真内野手(ブルージェイズ)の番記者・宮内孝太記者が現地で見届けたメジャー1号にたどりつくまでの舞台裏を「見た」―。

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 華やかな舞台とは対極にある静寂があった。

遡ること約11か月前。左肘の靱帯(じんたい)損傷の大けがで離脱。ジャイアンツ球場の故障班へと居場所を変えた。そこでの岡本の姿は異質だった。

 全治3か月以上の診断。目の前が暗くなるような宣告にも悲壮感とは無縁だった。早朝から姿を現し、ハードワーク。地道な指先のリハビリから患部外のトレーニングまでみっちりこなした。「ちゃんと治るかとか不安はありましたけど、そこで(メジャー挑戦を)断念する気持ちはなかった」。挑戦表明後にこう明かした強固な意志があった。

 すごみは自分を律するだけではない。故障班でともに過ごす若手に守備やトレーニング法を惜しみなく伝授。

リハビリを支えていた竹田トレーナーは証言する。「あの状況で周りに気配りもできるのは、アスリートとしてだけでなく人としてすごいなと見てました」。自らが底にいる時ですら周囲へ光をともし続けた。

 そのマインドがあるからこそ、異国でもすぐに受け入れられたのだろう。キャンプ中、合流して間もないながら多くの選手らと通訳を交えてコミュニケーションを取る姿があった。主砲のゲレロが「勝利に導くための準備ができている。本当にいいやつなんだ」と語るのは技術だけでなく、周囲への気配りと真摯(しんし)な姿勢がチームに化学反応を起こしていたからにほかならない。

 メジャー初アーチ後に歓喜の輪で映えた背中。あの夏の静寂は熱狂を呼ぶための助走にもなった。周囲を照らし続けた男が新たな舞台でもまばゆい光を放っている。(宮内 孝太)

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