箱根駅伝初出場を目指す明学大の新監督に就任した中村匠吾氏(33)がスポーツ報知の取材に応じ、新チームの印象や指導方針などについて語った。同校は「Road to HAKONE 2030」を掲げ、2030年秋までの箱根駅伝予選会突破、31年までの本戦出場を目指して奮闘中。

名門・駒大で箱根路を走り、21年東京五輪マラソン代表でもある新米監督は、現役時代に学んだ全てを生かし、チームを大きく飛躍させる。

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 就任から約1か月。前向きな学生たちの姿に、新任監督の指導にも一層、熱がこもった。中村氏は「雰囲気がすごく良い。選手たちは思っていた以上に競技に向き合う姿勢が高い」と印象を明かす。監督への報告・連絡・相談の徹底はもちろん、練習にも活気があふれる。3月に引退したばかり、33歳の指揮官は「選手に寄り添いながらやっていきたい」と、自身の強みを最大限に生かす覚悟だ。

 指導方針も見えてきた。学生たちに潜在能力はあるが「うまく記録につながっていない」ことが当面の課題。「自分たちがもうちょっとできるんだって思ってレースに出てくれると、もっと結果は出ると思う」。まずは自信を付けることを最優先に「(今年の)前半はトラックレースで自己ベストを更新してほしい」。地力をつける夏合宿では1周約15キロで起伏の激しい長野・野尻湖での練習も予定。

自身も駒大時代に地道に脚を磨いた場所で「自信を持った状態で10月の予選会を迎えたい」と思い描く。

 チームの良い雰囲気は残しつつ、“中村カラー”も注入中だ。現役時代は、オンオフの切り替えを大事にしてきた。これまで明学大には明確な休養日がなかったが、毎週日曜日は各自の体調に合わせる選択制でメリハリをつけた。毎日の練習報告や主観を記入するシートも作成し「私も気になったことをフィードバックできるような体制」と、ペース設定など個々に合った細やかな練習内容を提案。小出暖人主将(3年)も「皆が主体的に練習に取り組むようになった」と変化を実感している。

 新監督が最も長く指導を受けたのは、卒業後も師事した駒大の大八木弘明総監督(67)だ。今でも連絡を取り合うと言い「大八木さんのように現場第一」をモットーに掲げる。大八木氏を見習い、朝練習から自転車で学生についていく日々。「そういう姿勢が『自分たちを見てくれているんだ』って引きつけることにつながる」。学生たちに話す時は、恩師がよく使っていた「気持ち」という言葉も自然と口をつく。

 日本トップランナーの監督就任は刺激的だ。

駒大で箱根駅伝などで活躍し、19年MGC制覇、21年東京五輪に出場した。学生への正式発表は今年2月だったが、中学生時代に19年MGCを生観戦した小出主将は「フェイクニュースかと思った」と笑う。まだ練習で一緒に走ったことはないが「本当は一緒に走ってほしい」と期待する。新指揮官も「私の走りが少しでも参考になる部分があったら朝練習とか、たまに交じっても良いかな」と前向きだ。

 今年の箱根予選会で過去最高成績の19位以上、30年予選を突破し、31年の箱根路初出場が目標だ。選手唯一の4年生には今年の箱根駅伝に関東学生連合チームで出場し「予選会には必ずチームトップで帰ってきます」と頼もしい高橋歩夢もいる。「前倒しも考えていかなければならない」と中村監督。指導者としての箱根路返り咲きへ走り出した。(手島 莉子)

 ◆中村 匠吾(なかむら・しょうご)1992年9月16日、三重・四日市市生まれ。33歳。小学5年から陸上を始め、上野工(現伊賀白鳳)で全国高校駅伝に3年連続出場。11年に駒大入学。

箱根駅伝は2年3区3位、3年1区2位、4年1区区間賞。15年に富士通入社。21年東京五輪は61位。昨年4月に早大大学院スポーツ科学研究科に入学。同年10月の出雲駅伝ではアイビーリーグ選抜の臨時コーチを務め、チーム史上最高の4位入賞に貢献。今年3月に現役引退。

 ◆明治学院大学(めいじがくいんだいがく)略称は明学大、MGU。陸上部は1924年に創部。05年にスポーツの強化プロジェクトを開始し、08年に箱根駅伝出場を目標とした。09年箱根駅伝予選会に出場し46位(参加47校)。19年に鈴木陸が関東学生連合の一員として9区に出場し、明学大初の箱根ランナーに。25年5月、箱根本選出場を目指すプロジェクトを立ち上げた。

陸上部の練習拠点は横浜キャンパスで全天候型400メートルトラック完備。

 ◆主な駒大出身の指導者 駒大では、大八木弘明前監督(67)が総監督に就任した23年、OBの藤田敦史コーチ(49)が監督に昇格。今年の第102回箱根駅伝で総合2位だった国学院大の前田康弘監督(48)、箱根本戦に4大会連続出場中の立大の高林祐介監督(38)、拓大の治郎丸健一監督(41)らも同大学の卒業生だ。実業団では、クラフティア男子で高井和治氏(41)、コニカミノルタで宇賀地強氏(38)らが監督を務め、“大八木チルドレン”が活躍中。

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