◆歌舞伎座「四月大歌舞伎」(27日千秋楽)

 中村勘九郎が喜ばせ笑わせている。観客は首を伸ばして上方を見ている。

今月は勘九郎奮闘の夜「浮かれ心中」に注目。井上ひさし原作による初の新作歌舞伎で勘九郎が珍しい宙乗りに挑んでいる。

 珍しいと書いたが中村屋が宙乗りを披露するのはこの演目だけ。18世勘三郎が平成9年8月の明治座で初演し4回。勘九郎は3回目だが歌舞伎座では初めてだ。

 勘九郎が演じる栄次郎は豪商伊勢屋の若旦那。しかし絵草紙の戯作者になりたい。「おめでたく出来上がって」という人を笑わせるのが大好きなのだ。まさに中村屋の真骨頂。

 第1幕。白塗りの顔で最初の出は羽織のひもをクルクル回して登場。この笑いで観客の心を鷲(わし)づかみにした。

さらに花魁(おいらん)道中の下駄八文字のマネ、ツケ打ちに合わせて夫婦喧嘩(げんか)の芝居ごっこで爆笑させた。

 ここで突然、宙乗り豆知識。ケレンの原型の宙乗りは江戸中期、大仕掛けの芝居が人気を集め発展。現代では市川猿之助(2世猿翁)扮(ふん)する源九郎狐が昭和43年4月の国立劇場「義経千本桜」四ノ切で復活し、広く知られるようになり、2年後、歌舞伎座で初めて披露した。他では白馬の2人乗り、3人乗り、葛(つづら)抜けがある。ネズミ乗りは初ではないか。

 さて、勘九郎。題に「心中」とある通り、主人公は世間を驚かそうと心中を計画する。なぜ宙乗りの場面になるのか、にも注目だ。大ネズミにまたがって手を振り、したたるような満面笑み。これが“ちゅう(宙)乗り”というわけだ。ともかく喜んでもらうのが大好きな勘九郎。

自分も楽しんでいるという熱量を感じた。(演劇ジャーナリスト・大島 幸久)

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