俳優の山本耕史(49)は、0歳で赤ちゃんモデルとしてデビュー以来、今年で芸歴50年。1990年代にトレンディードラマで脚光を浴び、その後もミュージカルから時代劇まで幅広く活躍している。

「力み過ぎず、ほどほどに」がモットーで、シリアスな中に見せる絶妙なコメディーセンスは一級品だ。19日からはライフワークの筋力トレーニングで鍛えた肉体美を生かし、ミュージカル「フル・モンティ」(東京国際フォーラム・ホールC)に主演する。(有野 博幸)

 ジャケットを着ていても、人並み外れた肩幅の広さと上腕二頭筋の発達ぶりがよく分かる。山本は「俳優業とは全く関係ないけど、トレーニングはルーチンです」と語る。屈強な肉体と人懐っこい笑顔、そのギャップが魅力だ。

 中学時代から「男だったら、やっぱり鍛えておいた方がいいだろう。頑張ってトレーニングして筋肉がついたら、うれしい」と筋トレがライフワークに。1993年に大ヒットしたフジテレビ系ドラマ「ひとつ屋根の下」に出演した頃は、すでにムキムキで「お風呂のシーンで、僕だけ胸筋がすごすぎると言われました。車いすで生活する設定だから、移動する時に腕の力が必要。『上半身に筋肉があってもいいでしょう』とスタッフさんに話しました」。

 芸能生活は今年で50年。感慨深い思いが去来するのかと思えば、意外にも「不思議な感覚ですね。

物心ついたら、俳優になっていたから、自分で『役者として生きていこう』と思ったことがない」と涼しい顔だ。「幼い頃は、大人たちに囲まれた中で芝居をするのが『嫌だな』と思ったこともあったし、もちろん楽しい瞬間もあった。でも、『この役を勝ち取ろう』と力んだことはないですね」

 物事に執着せず柔軟な性格で、物腰も柔らかい。深く悩むこともないので、挫折とも無縁だ。「挫折って、何かに没頭するから、するんでしょうね。力み過ぎないことが大事。力が入りすぎると、体か心、どこかケガをしますよ。『まあ、いいか』の精神が大事」。半世紀、競争の激しい芸能界の第一線を走り続け、到達した境地なのだろう。

 大泉洋(53)と舞台「大地」(20年)で共演した際、「そんなに体を鍛えて、病弱な役のオファーが来たら、どうするの?」と聞かれ、潔く「断ります」と即答した。もちろん、過酷な減量など、ストイックに役づくりをする俳優のことはリスペクトするが、「僕はそこまでしなくても、いいかな。無理なく、ここまで来られたことが、すっごく幸せなことだから」と足元を見つめている。

 柔軟さは役づくりにも生かされている。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(22年)は気心の知れた三谷幸喜氏(65)が脚本を担当。主演の小栗旬(43)演じる北条義時と同世代の三浦義村役で「ずる賢い感じの役どころだったので、面倒くさそうな話が来たら、『心ここにあらず』みたいに、他のことを考えながら話すようにしました」。絶妙な間(ま)の取り方で、奥行きのあるキャラクターに仕上げた。

 時代劇は所作や堅苦しい決まりごとがありそうに思われているが、「現代劇よりもファンタジー。自由なんです」と語る。「リハーサルの段階から『何か面白い物はないかな』と現場の小道具を見る。巻物があったら、広げてみたり。セリフの合間に、そういう動きがあると、空間が広がる。触っちゃいけないものが、現場にあるはずないんだから」。大河ドラマはこれまで5作に出演。経験が大きな糧になっている。

 「鎌倉殿―」の終盤、義時に毒入りの酒を飲まされたと思った義村の、ろれつが回らなくなる場面がある。義時から「毒は入っておらん」と言われ、途端に義村は「本当だ。しゃべれる」と我に返る。その間が面白く、視聴者の記憶に残る名場面になった。撮影前には三谷氏から「どう演じるのか、楽しみです」と期待を込めたメッセージが届いた。当代一の喜劇作家も山本のコメディーセンスに太鼓判を押している。

 15年に当時女優だった妻と結婚。私生活では2児のパパだ。「結婚して人生観が変化したのか、圧倒的に楽しくなったのは間違いない。家に帰ると家族が待っていて、楽しい場所がある。仕事を早く終わらせて家に帰りたくなる」。休日も「妻とコーヒーを飲みに行ったり、スーパーで買い物したり。

子供が休みだっら、一緒に遊びに行きます」。家族と過ごす時間が生きる原動力だ。

 子育ても柔軟性を大事にしている。「最近の子供ってYouTubeを見たがりますよね。ずっと見ていると、妻は『やめなさい』と注意するけど、僕はあまり言わない。自分で『そろそろ、終わりにしようかな』って気付いてほしい」。すっかりパパの表情で「子供を見ている時が、一番面白い。僕の仕事に全然、興味なさそうなのに、僕の出演作の歌を口ずさんだり。本当に我が子って、かわいいですよね」とつぶやいた。

 ○…山本は1997年公開の映画を日米合作で舞台化したミュージカル「フル・モンティ」に主演する。失業中で元妻に親権を奪われそうになり、人生を変えようとストリップに挑戦するジェリー役で「うだつの上がらない男が必死になっている姿は美しくも残酷。爽快さを味わってほしい」。

日本人キャストは山本とゆりやんレトリィバァ(35)の2人だけ。米ブロードウェーで活躍する海外キャストの中に飛び込み、全編英語で演じる。持ち前の肉体美と歌唱力にも注目だ。大阪公演は9月10~14日に新歌舞伎座で上演する。

 ◆山本 耕史(やまもと・こうじ)1976年10月31日、東京都生まれ。49歳。0歳から芸能活動をはじめ、87年のミュージカル「レ・ミゼラブル」日本初演に出演。主な作品は92年のフジテレビ系ドラマ「愛という名のもとに」、93年の同「ひとつ屋根の下」、2004年のNHK大河ドラマ「新選組!」、16年の同「真田丸」など。10月期の日テレ系ドラマ「俺たちの箱根駅伝」にも出演する。

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