こうしたなかで、自主検査を行っている33県も検査を取りやめる方向で検討を進めているほか、一部の流通大手でも月内に、政府計画に沿った形の検査方針を発表するもようだ。東京電力福島第一原子力発電所事故から9年を経て、牛肉の放射性物質検査領域もようやく「正常な状態に近づきつつある」(ある県の畜産部局担当者)。
ガイドライン改定を受け、モニタリング対象4県は、独自の出荷検査方針を作成、原災本部に提出することになる。福島県以外の3県は基本的に、新ガイドラインが示す抽出検査に移行する方針。検査対象の抽出にあたっては、飼料や給餌状況、出荷状況など放射性物質による汚染リスクが高いと認められる牛などが考えられる。一方、福島県では、肥育牛にについて全戸検査を実施、廃用牛について全頭検査を維持する意向のようだ。
畜肉中の放射性物質検査をめぐっては18年度までに、すべての出荷制限が解除された。現行のガイドラインでは現在、監視対象4県へのモニタリング検査の実施を求めているだけ。しかも検査は基本的に年に1回、1戸1頭の牛を対象に行えば済む。だが、実際には、「検査証明書」の発行を求める流通側の要望などに沿う形で全頭を対象に検査を実施しているのが実情。
自主検査を取り入れている数は33県に上る。各県とも“無駄な検査”と自覚しつつも、「他県が止めないのに自県だけがやめるわけにはいかない」という“負のスパイラル”から抜け出せない状態が続いていた。
〈畜産日報2020年3月12日付〉

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