2月の豚枝肉相場は末端消費の弱さから、当初は高くても500円前後(上物税抜き、以下同)で推移するとみられていたが、関東甲信地方で大雪となった影響で大幅に上昇し、2月第2週は上物税抜きで600円がらみの展開となった。その後、降雪による出荷への影響は収まったものの、出荷・市場上場頭数が極端に多かったわけではなく、連休に向けた手当買いも入り、500円台前半から半ばでの価格で推移し、東京市場の月間平均では550円(前年同月比6円高)と高豚価となった前年を上回る結果となった。
末端需要は、輸入豚肉のコスト高から量販店の取扱いも国産生鮮物にシフトしていたが、豚小間・切り落としとひき材が中心で、中部位の荷動きは振るわなかった。3月も現状をみる限り、末端需要は前月と同様にスソ物中心の展開が予想され、中部位の消化が課題といえる。3月中旬から桜前線とともに量販店の棚替えが進んでいくとみられるが、焼材の動きが本格化するのは4月以降とみられる。これに対して3月の出荷は、前年をやや下回るとみられ、輸入量も現地相場高と円安で少ない見込み。このため枝肉相場も基本的には上物税抜きで530円前後の高値を維持すると予想する。

〈供給見通し〉


農水省の肉豚出荷予測によると3月の出荷頭数は前年同月比2%減の143.7万頭と予想している。前年よりも稼働日が2日少ないため、1日当たりでは7.2万頭と前年より4,100頭多い見通しだ。
2月は一部地域で寒波による出荷への影響があったものの、全体的には暖冬で増体が良く、2月後半にかけて出荷が回復した。一部の出荷者では増体が進んだことで前倒し出荷を行った反動で在庫が薄くなっていると指摘されている。このため、3月の出荷・上場頭数も多くはなく、これが3月の取引価格にどう影響してくるか注視したいところ。農畜産業振興機構の豚肉需給予測によると、3月の輸入量はチルドが同11.4%減の3.2万t、フローズンが同5.1%増の3.5万tとしている。チルドの輸入は円安と現地相場高が影響しているとみられ、前月と同様に国産にとっては追い風といえる。

〈需要見通し〉


2月は2回の3連休と、4年に一度の「肉の日」があったが、末端消費は豚小間や切り落とし、ひき材が中心となった。春一番が吹いた後に寒波が到来するなど月間通して寒暖差が激しかったため、鍋商材の販売は中途半端なものとなったようだ。
このため、パーツの販売も引合いが堅調なのはウデ、モモ、大貫正肉、チマキなどで、バラ、カタロース、ロースは振るわず。前述の通り、豚価も高値で推移したため、凍結に回すこともできず、中間流通各社は自社加工分など必要分を除いて、フレッシュのままスソ物とのセット販売や価格対応が余儀なくされた。

気象庁の季節予報によると、3月1週目(2~8日)は平年並みの気温だが、2週目から4週目は全国的に平年より高い気温の日が多いとしている。例年3月は学校が春休みに入るためスソ物の需要が一服する半面、歓送迎会や新生活応援、ホワイトデーなどのイベント、そして春の棚替えで焼材関係の引合いが出始めるころだが、足元の需給動向や消費環境からみて、基本的に月間通してスソ物・ひき材の引合いは強さを維持するとみられる。中部位は、決算期を控えていることもあり、引続き価格対応による動きが多くなりそうだ。スペアリブなどのBBQ商材も現時点では発注が少なく、早くても3月後半からとみられる。
大貫物の枝肉も400円台後半を維持しているため、正肉でも600円台後半の高値を維持するか。

〈価格見通し〉


3月1日の関東3市場の枝肉相場は上物税抜きで518円からスタートし、4日は523円(横浜市場が休みのため1日の建値適用)と続伸するなど、再び上昇気配をみせている。前述の通り、各産地で概ね増体成績は良いものの、一部の出荷者では在庫が少ないと言われているため、今後の出荷・市場上場頭数、そしてスソ物・ひき材関係の需要の強さから、3月も500円台を割ることはなく、前半は日によって550円前後、月間平均で530円前後と予想する。

〈畜産日報2024年3月5日付〉