〈荷動きは切り落とし系中心、焼材は天候次第〉
6月の牛肉の末端需要は、需要の端境期のなか、輸入牛肉のコスト上昇などで販促など値ごろ感を訴求することが難しく、例年以上に厳しい展開となった。全国的に梅雨入りが遅れたものの、量販店の焼肉商材の売行きは振るわず。期待された「父の日」需要も、ステーキは横ばいながら、焼肉関係が前年割れで、逆に切り落とし関係が伸長するなど、昨今の消費環境を反映した形となった。
外食関係もゴールデンウィーク以降は節約志向が強まり、ホテル・レストラン関係も目立った売行きは見られなかったようだ。このため、6月の牛枝肉相場は輸入牛肉の代替が強まったホルスを除き、和牛・交雑種は軟調に推移し、和牛の上位等級は前年相場を200円近く下回った。交雑種は和牛からのシフトで前年よりも高値を付けているが、4~5月に比べると一服感がみられる。
7月は梅雨明けまでは需要の回復が見込まないが、それ以上に物価や生活費の高騰で消費者の生活防衛意識が根強いため、単価の高い牛肉の商売は試練が続くとみられる。梅雨明け以降は焼肉関係の需要が強まる流れだが、昨年は猛暑の影響で販売が苦戦したこと、そして円安で輸入牛肉の仕入れコスト上昇が見込まれるため、末端も積極的な販促をかけ難い状況となっている。
[供給見通し]
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、7月の肉牛出荷頭数は、前年同月比3.7%増の9万9,300頭と見込んでいる。内訳は、和牛が4万9,000頭・同6.8%増と多く、交雑種が2万2,700頭・1.4%減としている。乳用種は2万6,400頭・3.1%増だが、ホルスタイン種雄は4月末現在の個体識別情報から予測すると9千頭台と前年より1割少ないとみられる。牛肉の輸入量は、機構の需給予測によると、チルドが1万7,300t・10.6%減、フローズンが2万5,300t・31.0%増と予測している。フローズンは前年の輸入量が少なかった反動で多いが、テーブルミート主体のチルドは外貨高・円安の影響で供給量は絞られてくる見込みだ。
[需要見通し]
中間流通・末端とも7月の牛肉需要はかなり厳しいとみているようだ。末端で動いているのは、切り落としなど安価な商品のみで、焼肉が伸び悩んでいる。このため、パーツの荷動きも、和牛・交雑はウデ、モモ、スネくらいで、ロース、バラが動かず、スソ物とのセットや価格対応で回している状況だ。カタロースは一部焼肉スペックの引合いがあるほか、年末に向けた凍結回しの手があるため、まだマシな方といったところ。
ホルスは輸入牛の代替でロース、カタロースの引合いがみられるものの、絶対量が足りないため、完全に代替することは難しく、パーツ単価も枝肉相場に追いついていない。「海の日」を境に、各量販店では焼肉の品ぞろえを強化する方針だが、バイヤーに聞いても、「猛暑の影響でどこまで需要が付いてくるか不透明。むしろ、豚の冷しゃぶに注力する」(関西)、「この時期の商品政策として焼肉は避けることはできないが、あまり無理をしない」(首都圏)といった声が聞かれる。例年、夏休みに入るとウデ・モモ系の動きは鈍くなるものの、前述の状況から、ことしは切り落とし関係の需要は継続するとみられる。
[価格見通し]
今後の出荷動向にもよるが、7月の枝肉相場は上げ材料が乏しく、和牛・交雑は月間通して軟調に推移するとみられる。ホルスは輸入牛の代替として堅調な需要が期待されるものの、絶対量が足りないため、交雑種の2等級まで引合いが及んでくるかは微妙なところといえる。このため、7月の牛枝肉相場は、和牛去勢A5で2,300~2,400円程度、同A4で1,950~2,050円程度、同A3で1,800円前後とみる。交雑種去勢B3は1,500円前後、同B2で1,350円前後、乳用種去勢B2で1,050円前後と予想する。
〈畜産日報2024年7月3日付〉
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