業務用市場は、コロナ禍からの脱却後、インバウンド需要の復調や人流の活性化などで回復している。

こうした中、調理現場では人手不足への対応などが改めて求められるようになっている。
ニッスイでは、こうしたニーズに応えた商品を投入し、販売を伸ばしていきたいという。業務用食品部長の金澤建支氏に聞いた。(取材は6月18日に実施)

――2023年度について


22年と比較すると、多くのメーカーで原材料価格の高騰や円高などの影響を受けて価格改定を実施せざるを得ない状況だったと思う。当社も同様で、価格改定については何とかお客様にご理解頂けたため、売上は前年を確保できた。ただ、数量ベースでは若干の落ち込みが見られた。

コロナ禍からの脱却で多くの業態で売上は回復基調にあったが、外食は営業時間の短縮や店舗の減少などでコロナ禍以前の水準には戻っておらず、当社では枝豆などの主要商品に影響があった。一方で、スーパーの惣菜などが引き続き好調だったほか、コンビニや給食業態も順調に回復している印象を受ける。当社の場合、19年度比でも前年を上回った。

――数量を高めるための取り組みは。


円安の影響が大きい輸入品は安易に特売ができる状態ではない。商品の提案をより丁寧に行い、商品の良さがどこにあるのかを明確にしながら伝えていく活動を進めている。商品を採用いただくメリットを分かりやすく示したパンフレットの配布や、展示会での提案もしっかりと行い、他社との違いをお伝えしている。

――現在のニーズは。


やはり人手不足への対応は重要になると考えている。本来オープンしているはずの朝の時間に店を閉めている飲食店を見かけることもある。ホテルでも、朝食のビュッフェを1人で調理しなくてはならないこともあるようだ。求人をかけても人が集まらないという声も多く聞いている。そのため、調理の現場での負担の軽減に貢献する商材の提案を強めている。

――好調だったカテゴリーは。


多くのカテゴリーが伸長しているが、その中でも春巻きやシューマイといった中華類が2ケタの伸びとなった。特にシューマイは、3種類のサイズをそろえ、弁当を中心とした給食から、量販店のデリカ、外食など幅広い業態にご採用いただいている。見た目のボリューム感や、食べた時の肉感、味の3点が特に評価されたポイントだ。

また、エビフライやアジフライといった主力の水産揚げ物類も好調だった。ちくわなどのすり身加工品や枝豆も2ケタで成長している。

――今春発売の商品で好調だったものは。


今春発売した「E 調理」シリーズの新商品「同あじフライ」「同 栗かぼちゃ旨煮」などの動きが良い。「E」には、「Economy(節約)・Easy(簡便)・Efficiently(効率的)」の3つの意味を込めており、外食や給食、老健施設など、人手不足に悩む施設に最適な商品として提案している。電子レンジでも調理できるものもあり、油を使わないことから片づけの手間も減らせるため、利用された方からの評価は高かった。

調理の現場で人手不足は大変深刻な問題になっている。お客様の人手不足や人件費の抑制に貢献できる商品を積極的に開発し、提案していきたいと考えている。秋冬の新商品も同様の点を重視していく。

――24年度の市場の見通しは。


23年度よりも厳しい年になると考えている。各社とも、価格改定によって23年度下期から数量の下落傾向が続いている。これは当面続くと見ており、苦しい状況になるだろう。生産性の向上につながる取り組みとして、取り扱いのアイテムの整理や、原材料や包材などのモジュール化、物流費の削減などに取り組む必要があると考えている。

値上げについても、為替次第ではいずれ検討しなくてはならない(6月27日に、10月1日納品分からの一部商品の値上げを発表)。

〈ニーズの高いテーマに軸足置いた開発 強みの水産など活かした商品提供も〉

――今後の目標などについては。


市場やお客様のニーズが高いテーマに軸足を置いた商品開発を続けることが一番だ。直近では、深刻な調理現場での人手不足に対応するため、作業の効率化などに貢献できる商品を継続して発売していくこと、発売した商品を継続して改良していくことが大切だと思っている。

また、コロナ禍以降に中食や外食、内食といった業態の垣根が低くなってきており、売場でもコーナーごとの垣根は薄れているように感じる。この変化を踏まえて柔軟に対応した商品作りをしていく必要があるとも考えている。

ニッスイは水産の原料を強みとする会社だ。水産品を原料とした製品や、我々の生産技術を活かし、役立つ商品を数多くお届けすること。これが業務用食品の中期的な方向性だ。

〈冷食日報2024年7月16日付〉
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