◇ 水市場は過去最高を更新
ミネラルウォーター市場規模が過去最高となっている。2024年(1~12月)の国内生産量・輸入量合計は約515万klで前年比103.1%、販売金額も4906億円で前年比113.1%と大きく伸びており(日本ミネラルウォーター協会調べ)、生活必需品としての存在感をさらに高めている。
好調の要因は、猛暑による水分補給ニーズや災害備蓄需要に加え、無味・無臭で常温でも飲みやすい特性への再評価だ。
価格が手ごろで、余計な成分が入っていない安心感も若年層を中心に支持を広げている。
◇ “何も入っていない水”に変化の兆し
こうした背景の下、今春はミネラルウォーターブランドから“味”や“香り”、“飲み方”の工夫を加えた新提案が相次いだ。「何も入っていないこと」が価値だった水に、あえて“何かを加える”動きが鮮明になっている。
ナショナルブランド各社は、信頼感を土台に“選ばれる水”としての提案を強化し、品質やリサイクル対応などの環境配慮だけでなく、安価なプライベートブランドとの差別化を進めて飲用シーンの拡大をねらう。
「い・ろ・は・す」(コカ・コーラシステム)は4月21日、液色付きフレーバーウォーターの「い・ろ・は・す もも」「同 シャインマスカット」をリニューアル発売した。果実感のある色味とみずみずしい味わいで直感的に「飲みたい」と思わせる見た目を追求。「い・ろ・は・す」に色がつくのは初めて。同日には熱中症対策飲料「い・ろ・は・す 塩とれもん」も投入し、猛暑に向けた水分・塩分補給ニーズを取り込んでいる。
サントリー食品インターナショナルは、「サントリー天然水」で冷凍可能な容器を採用した「サントリー天然水 冷凍PET」を4月1日に新発売した。暑さ対策や保冷用途を意識した提案だ。さらに、乳性飲料「サントリー天然水 きりっとヨグ 朝摘みレモン&ヨーグルト味」を4月22日に投入している。「きりっと」シリーズとして初の乳性飲料カテゴリーへの挑戦となる。
「きりっと」シリーズは、果実の飲みごたえと爽やかな後味を両立させ、仕事や学業の合間でも“オンタイムにおいしく飲める水”として支持を広げてきた。
2022年5月から2025年3月までの累計販売本数は6億本を突破し、その成功が他社の味付き・機能提案のきっかけとなっている。
アサヒ飲料は「アサヒ おいしい水」ブランドから、植物由来アミノ酸と手摘みレモンエキスを配合した「アサヒ おいしい水 天然水 からだ澄む水」を4月15日に発売した。無糖・カロリーゼロでありながらすっきりとした飲み心地を訴求し、“水は味がないから飲みにくい”という層にもアプローチしている。アサヒは、ラベルレスボトルや白湯など水商品の提案に積極的で、今回も市場の裾野を広げる取り組みを行う。
◇ 水ブランドの信頼感を生かし受容が拡大
水は、無添加の安心感は依然求められているものの、水ブランドへの信頼感により、ほどよい味や使い方の工夫が受け入れられる柔軟さが出ている。無添加の象徴だった水の役割や飲用シーンが、少しずつ広がっている状況だ。生活必需品でありながら「どう選ぶか」の楽しみも提供し始めている。
気象庁によれば5~7月の平均気温は、北・東・西日本で高い確率が60%と予測されている(気象庁「3か月予報」4月22日)。水分補給の需要が一段と高まる中で、水や水ブランドの製品を選ぶ人が、また増加しそうだ。
編集部おすすめ