2024年に日本へ初進出した韓国No.1のハンバーガーチェーン「MOM’S TOUC(マムズタッチ)」。手頃な価格とボリューム感のある商品設計を強みとするブランドで、ハンバーガー店としては韓国国内で最も多い店舗数である1,450店舗を展開している。
看板メニューの「サイバーガー」(日本では単品税込520円)は、鶏もも肉を丸ごと使ったサクサク衣のパティが特徴のチキンバーガー。

日本1号店の渋谷店は、開業から1年間で約70万人が来店し、売上が累計5億円を超えるなどの成功を収めた。2025年内に10店舗のオープンを、26年5月までには100店舗を目指す考えだ。マムズタッチアンドカンパニー代表取締役のキム・ドンジョン氏に話を聞いた。
韓国No.1バーガーチェーン、日本で26年5月までに100店舗を目指す「マムズタッチ」キム・ドンジョンCEOインタビュー
マムズタッチ渋谷店
マムズタッチ渋谷店

――日本市場を選んだ理由は


マムズタッチは、“最も合理的な価格で最高の体験を提供する”というブランド哲学をもとに急速成長してきました。韓国で2004年設立と後発のブランドでしたが、短期間で店舗数1位となりました。

この成功体験をもとに、グローバルなQSR(Quick Service Restaurantの略でファーストフード店を指す)市場でも競争力を証明できるかを確認したいと考えました。日本はQSR先進国であり、外食ブランドに対する消費者の期待水準が非常に高く、同時に外国系ブランドの参入障壁も高いため、よく「外来ブランドの墓場」とも言われています。しかし、その市場で成功すれば、世界市場でも通用するという確信を持っています。

――外食業界では日本ブランドが韓国で定着するのも、韓国ブランドが日本で定着するのも難しいと言われてきました


私の認識でも、日本で定着している韓国の外食企業は少ない印象です。定着しなかった理由の一つには、ほとんどのブランドが、韓流好きの少数なターゲットに向けてアプローチしてきたことがあるように思います。

例えば、韓国チキンを食べたい時は、新大久保で食べるといった風に、日本の食生活に溶け込んでいる状態にはなれていないと考えます。これまで日本に挑戦してきた韓国ブランドは、こういった特殊なオケージョンに求められる形態だったかと思います。

そのため、マムズタッチでは「韓国ブランド」のイメージを中長期的には消していくべきだと考えます。
消費者は日ごろ外食チェーンを選ぶ際に、どの国のブランドであるかを重視しません。その店舗で提供されるすべての経験に対して価値を感じるかが大切です。ファストフードの基本であり、マムズタッチでも最重要だと考えるのは、おいしい料理を早く提供することです。この基本を常に実現し、維持していきます。
韓国No.1バーガーチェーン、日本で26年5月までに100店舗を目指す「マムズタッチ」キム・ドンジョンCEOインタビュー
マムズタッチ 看板メニュー「サイバーガー」
マムズタッチ 看板メニュー「サイバーガー」

――マムズタッチのこだわり・強みは


一般的なファストフード店は、工場で加工した冷凍食材をそのまま揚げたり焼いたりする場合が多いですが、マムズタッチでは店舗内のキッチンでチキンの衣付けから揚げの工程まで手作業で行い、味・品質の向上を図っています。

また、提供時間の短縮に向け、渋谷店では厨房とレジの間にコンベアベルトを導入し、日本市場向けのオペレーション改善を行いました。この取り組みは2024年6月に韓国・明洞の店舗でも採用され、両国間で運営ノウハウを共有し、相乗効果を生み出しています。

――商品開発について


現在、日本ではまだR&Dセンターを持っていないため、韓国本社で商品開発を行っています。日本でのローカライズ戦略として開発した渋谷限定メニュー「本格プルコギバーガー」は、日本での反響を受けて、韓国でも販売しました。

今後は、日本法人にもR&D機能が必要だと考えています。ブランドの根幹となるソース以外は現地化し、日本での原料調達もしていきたいです。

――店舗出店について


直近では、2025年9月末に原宿店を直営でオープンするほか、秋にはフランチャイズ加盟1号店として、新オープンの商業施設「BLiX茅ケ崎」に出店します。そのほか、下北沢、横浜などでの出店を目指しています。

日本国内でフランチャイズ事業を本格化するにあたっては、商業圏と生活圏の双方を対象とした「ツートラック戦略」で進めていきます。

原宿店は土地代が高いため直営で運営する予定であり、来店する消費者にブランドならではの特別な経験を提供することで、ブランド認知度の拡大を図る計画です 。
一方、東京近郊エリアや住宅街では、投資負担を抑えた40~50坪の小型店舗でのフランチャイズ展開を計画しています。
韓国No.1バーガーチェーン、日本で26年5月までに100店舗を目指す「マムズタッチ」キム・ドンジョンCEOインタビュー
「マムズタッチ渋谷店」店内客席
「マムズタッチ渋谷店」店内客席

――最後に


何より、日本市場においてマムズタッチが目指す方向性は「リピート訪問を促す生活型QSRブランド」です。単なる 「韓国から来た外食ブランド」ではなく、消費者の日常に自然に溶け込む生活ブランドとして定着し、持続可能な成長を遂げていきたいと考えています。

大事にしていることは、1,000円を支払って得られることができる最高の経験を提供すること。1番は味、2番目は店の雰囲気やサービス。この2つに重きを置いて、日本のお客様にも満足してもらえるブランドとして、10代~20代の若者や韓流好きだけでなく、中高年にも支持されるブランドを目指していきたいです。

〈プロフィール〉
キム・ドンジョン氏
1977年ソウル生まれ。2004年延世(ヨンセ)大学経済大学院卒業。2006年市場調査専門機関シノベイトコリア入社。2009年韓国マクドナルドビジネスインサイトチーム長、2015年SAMSUNG電子無線事業部次長を経て、同年よりKL&Partners副社長に就任。2021年からマムズタッチアンドカンパニー代表取締役も兼任し現在に至る。
韓国No.1バーガーチェーン、日本で26年5月までに100店舗を目指す「マムズタッチ」キム・ドンジョンCEOインタビュー
マムズタッチアンドカンパニーのキム・ドンジョン代表取締役
マムズタッチアンドカンパニーのキム・ドンジョン代表取締役
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