食品加工処理と紙容器充填包装システムの世界的なリーディングカンパニーである日本テトラパックは、豆乳を始めとした植物性ミルクの紙パック容器を製造しており、市場の大半を占めている。

植物性ミルク市場の動向や、消費を促進する取り組みをマーケティング部のエリック・ウォンマーケティングマネージャーに聞いた。


――植物性ミルク市場の現状について

日本の植物性ミルク市場は豆乳9割、アーモンドミルク1割、オーツミルクが2%ほどを占める。豆乳は1980年代に第一次ブーム、2000年代に第二次ブーム、2010年代に第三次ブームが起こった。

これから、第四次ブームが到来すると考える。生産量は20年からは下回っているものの、2024年6月から成長し、25年も引き続き好調だ。豆乳の健康価値を消費者に伝えることに加え、各社のマーケティング活動によって、第四次ブームは到来するだろう。

アーモンドミルク市場は、2025年3月に前年同月比47%増だった。市場は伸びているものの、まだ小さいので、支援策を当社で行っている。

豆乳は健康面が支持されているのに対し、アーモンドミルクは健康面だけでなく(ビタミンEやミネラルを豊富に含むことから)美容面も評価されている。飲用する人は7割以上が女性だ。幅広い世代に飲まれているが、特に若い世代に広く飲まれている。

オーツミルクに関しては、乳業メーカー各社から発売されたが、まだなじみがないカテゴリのため横ばいとなっている。

――豆乳の消費トレンドは

機能性表示食品の国内市場規模が2024年は7,274億円を見込んでおり、健康を守りたいという認識の高まりが見える。
各社、健康ニーズに合わせて戦略を進める形だ。豆乳の健康ベネフィットを消費者にもアピールできるよう、当社もサポートする。

GABAやDHA、カルシウム入りなど健康系の豆乳が2024年から増えており、これからいろいろ紹介されるだろう。消費者の今の年齢層を考えると、今後も伸び続けるカテゴリだと思う。

男女比は、女性が約6割、男性が約3~3.5割だ。女性は50~70代の世代構成が厚い。最近は男性の飲用も増えている。運動や筋トレ時にプロテインを摂取する重要性が高まっている傾向だ。

豆乳は夏や秋に消費量が増える。飲料業界の他カテゴリを見ても同じ傾向だ。暑くなると消費が多くなる。そのまま飲む人が約65%、ソイラテにして飲む人が約14%、料理に使う人が約10%だ。

◆351~500mlの中容量パッケージを提案へ、全粒大豆飲料の技術を日本で紹介


――植物性ミルクの分野における貴社の戦略について

2つある。1つは多様なパッケージングだ。植物性ミルクは200mlと1Lがほぼ占めるが、容量のニーズが変化している。家族構成が細分化してきているためだ。年々、単身世帯と高齢世帯が増加している。牛乳を見ると、351~500mlの中容量の成長率が増加している。中容量のニーズが高いということだ。また、乳製品全体では、101~125mlの小容量が一番伸びた。
豆乳は第四次ブーム到来、伸び続けるカテゴリーは健康系/日本テトラパック
豆乳飲料は好調な販売を続けている
豆乳飲料は好調な販売を続けている
出荷量をみると、キャップ付きはストロータイプの3.5倍伸長している。ストロータイプは飲みきれなかった際に持ち運べない。

消費者ニーズも細かく変化している。さまざまなカスタムと、ポートフォリオの中で、最適なものを当社が提案していく。

2つ目は「ホールサムソイ」(全粒大豆飲料)という技術だ。
通常、豆乳を作る際におからが出るが、「ホールサムソイ」なら出ない。大豆の栄養をまるごと摂れる。メーカーにとって、おからの廃棄処理は課題の1つとなっている。この技術を導入することで解決でき、栄養も摂れるため製品バリューが付けられる。

この技術を実現する機械を、御殿場テクニカルセンターに導入予定だ。商品化に期待したい。

味は豆乳とほとんど同じだ。微細に粉砕するためドロドロした感じはしない。ネックとなるのは、現在の農林水産省のJAS規格によると、おから(繊維質)を除去していないと豆乳と呼べないことだ。大豆飲料というカテゴリに分類される。

しかし日本の消費者にとって、豆乳は高い認知度があり、大豆飲料として販売する場合、認識のギャップをどう減らすかが課題になる。

――プロモーションや市場啓発について

マクロミルによると、豆乳購入が一番多かった2020年から2023年まで購入率が全体的に下がっていた。
仮説として、豆乳が発売されてから長いため、健康価値が忘れられているのではと考えた。そこで、再び消費者に認識させるために、独自で予算を組んで、「リセッ豆乳プロジェクト」という名前でプロモーションを実施している。

キーメッセージは、「動物性たん白質と植物性たん白質をバランスよく摂ろう」だ。日本では、動物性食品でたん白質を摂る人が約7割だったが、どちらも同等に摂ることが大事だ。2024年5月からPRを実施し、ニュースレターの配信や鉄道広告、レストランとのコラボメニュー提供などを行った結果、豆乳市場では同年6月から売上が上向いた。継続して実施したい。購入率の変化では、広告掲出前と後で、7ポイント上昇した。

アーモンドミルクでの取り組みでは、飲料メーカー各社も参画する「アーモンドミルク研究会」で、一緒にプロモーションを行っている。ウェブニュースレター配信やインフルエンサーによるPRを行ったほか、カフェ「Toshi Yoroizuka TOKYO」で「オリジナルアーモンドミルク&スイーツセット」を期間限定販売した。

パウンドケーキにはアーモンドミルクを絞った後に残るアーモンドパルプを使用した。この取り組みはインターネット上で良い反応を引き出した。味を伝えつつ、健康価値や美容価値を一緒に訴求し、ユーザーを増やしたい。


また、2024年末にグループインタビューをしたところ、アーモンドミルクは8割近くの人が知っていたが、2.5%しか購入していなかった。これはかなり低い数値だ。味がイメージしにくいのが理由だ。まずトライアルする施策を今やっている。

◆今年も豆乳とサウナがコラボ、「サウナの後に豆乳」というイメージを強く推す


――「リセッ豆乳プロジェクト」の今後の取り組みについて

今年もサウナとのコラボレーション企画を開催する。西麻布と横浜の2カ所で、10月12日「豆乳の日」・11月11日「ととのえの日」にかけて実施する。また、2024年に期間限定販売した豆乳冷麺が好評だったことから、コラボ先の「スカイスパYOKOHAMA」では現在、「豆乳サンラータンメン」や「豆乳ラッシー」など豆乳メニューを販売している。「温泉の後に牛乳」のように、「サウナの後に豆乳」というイメージを強く推したい。

4~6月までYouTube広告も投下していた。男性篇と女性篇を配信し、たん白質のバランスの大切さをアピールした。9月頃にも実施予定だ。視聴完了率は平均より高かった。


――今後の戦略や展望について

当社のモットーは、「大切なものを包んでいます」だ。食品をどこでも安全に入手できるようにし、食品や人々、地球を守るという約束を果たしたい。植物性ミルクをより多くの人に紹介し、まず飲用してほしい。お客さまと一緒に取り組みながら、植物性ミルクのイノベーションを紹介したい。豆乳には若い人に、アーモンドミルクには男性に紹介したい。

植物性ミルクは当社にとって非常に重要なカテゴリーだ。おいしく健康価値のある植物性ミルクを紹介し、愛用してもらうのが私の願いだ。

〈大豆油糧日報 7月24日付〉
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