〈第1四半期は構造改革の成果で好業績、ベインは追加投資も視野に〉


ヨーク・ホールディングス(HD)は、9月1日付で米投資ファンド、ベインキャピタル(ベイン)の傘下となった。今後、ベインとの協業の上で、早期のIPO(新規上場)を目指す。
また、構造改革の中で、イトーヨーカ堂は従来のGMSからフード&ドラッグ事業に専念し、改めて「食」へのフォーカスとオリジナルブランド強化を進める。3日、東京都葛飾区・金町の再開発事業でオープンした商業施設「MARK IS 葛飾かなまち」のキーテナント、「ヨークフーズ MARK IS 葛飾かなまち店」開店に際して記者会見し、ヨークHDの石橋誠一郎社長、ベインの西直史パートナー兼プライベート・エクイティ共同責任者らが同社の今後の戦略などについて話した。

同社は9月1日、セブン&アイHDからベインへの8,000億円強での株式売却が完了し、新体制の株主構成はベイン60.0%、セブン&アイHD35.07%、創業家4.93%となった。

石橋社長は、同社設立の意義について「食品スーパーのみならず、専門店も有するグループで、日常の豊かさを提供し、くらしにかかわる社会課題を解決するグループを目指す」とする。

また年間6.8億人が来店する大きなグループでありながら「セブン&アイHDの中では営業利益構成比が3.2%ほどしかなかったため、各事業会社に対してのサポートが弱かったと考えている。ヨークHDの中では各事業会社の利益構成比が非常に大きく、その業績がHD全体にも大きく影響する。HDとして、1社1社との対話、課題解決を一緒にしていくグループを目指す」など話した。

そうした中、ここまでの構造改革の成果もあり、第1四半期(25年3~5月)の営業利益は、SST(スーパーストア)事業が63億円増の84億円、その他の事業(専門店等)が24億円増の46億円増で、計画を上回った。

今後については、従来GMS業態だったイトーヨーカ堂の専門店事業やテナント事業を、従来デベロッパー事業を手掛けてきたクリエイトリンクに移管。イトーヨーカドーは従来のGMSから、フード&ドラッグ事業に経営資源を集中させて専念し、改めて「食」へのフォーカスとオリジナルブランド強化を目指す。

また、クリエイトリンクはデベロッパー事業に加え専門店事業を有することで、独自のリーシング・開発・運営管理を実現。「館」の魅力度最大化を目指す。
建築資材高騰などの環境変化により、SCの新規出店の減少が見込まれ、イトーヨーカ堂が保有する好立地のGMSを、LOFT、アカチャンホンポ、デニーズといった独自性のある専門店も活用しながらCSC(コミュニティショッピングセンター)に転換していくことで、さらなる成長を目指すとする。

加えてヨークベニマルについては現在の製造・配送拠点から届くエリアである埼玉・千葉・群馬などで現在の店舗網の延長線上の中で出店地域を拡大する方針も示した。

これら改革を進めるため、9月1日付でグループ変革推進室を始動させた。▽ITコスト適正化▽(イトーヨーカ堂とクリエイトリンクの)事業移管計画・検証▽各社横断調達▽プライシングロス改善▽セントラルキッチンの連携▽スーパー向けセブンプレミアム商品の開発拡大▽事業構造改革施策の徹底――の7つのテーマで、初期はSST事業を皮切りに、変革における最重点施策を事業会社の枠組みを超えて実行責任を持ち、マネジメントを行う。

一方、同社は引き続きセブン&アイHDの持分法適用会社であり、商品開発においては既に公表の通り、PB「セブンプレミアム」などの開発は従来通りの体制を維持。ヨークHDが得意な商品領域においては、セブン‐イレブンに積極的に商品供給し、その機能による売上・収益も確立していくという。

また、ベインの西氏は、「出資するだけでなく企業価値の向上や成長支援を重視したファンド」だと話し、ヨークHDの成長性について「調査の結果、当初想定より高い」と言及。これまで同ファンドが企業再建で培った知見を導入するとともに、今後、イトーヨーカ堂の既存店舗の改装を軸に、ヨークベニマルの出店地域の拡大などでのM&Aも含めると、最大数千億円規模の追加投資はありうるなど話した。

〈冷食日報2025年9月4日付〉
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