〈事業構造改革の成果が形に、惣菜でピースデリの効果がけん引〉


イトーヨーカ堂の25年度第1四半期(25年3~5月)業績は、各種事業構造改革の成果により、既存店売上高の伸長と販管費の抑制により収益が大幅に改善し、東日本大震災があった2011年以来の営業利益となった。ヨーク・ホールディングスが3日、東京・金町で開催した戦略説明会の中で、イトーヨーカ堂の山本哲也社長が同社の直近の取り組みと業績概況などについても話した。


同社は過去2年間、事業構造改革として〈1〉食へのフォーカス・オリジナルブランド強化〈2〉改装による既存店の活性化〈3〉間接コストの削減――に取り組んできた。最大のポイントは〈1〉食へのフォーカスで、その一環としてイトーヨーカ堂とヨークの経営統合(2023年9月)、PeaceDeli(ピースデリ)によるセントラルキッチン、プロセスセンター機能の保有(千葉キッチン2024年2月稼働)、ヨークベニマル、シェルガーデンとの連携強化を図ってきた。

〈2〉既存店の活性化は、それまで新店投資が中心で既存店への投資が劣後していたことから、競合との競争に勝てなくなっていたという。その反省から、ここ数年、既存店活性化投資に注力した。その結果、イトーヨーカドーで食品改装を行った22店舗の既存店売上高は前年比7.4%増、ヨークで食品改装を行った24店舗の既存店売上高は5.8%増と確実に成果が出た。

〈3〉については、売上規模がありながら収益性が低かったため、聖域のないコスト削減の取り組みを実施。地方店舗の閉鎖・譲渡、本部の移転、不採算事業の撤退など、さまざまなものに対し「過去にどうだったかではななくこれからどうあるべきかという視点の中で改革を進めた」(山本社長)という。

これらの結果、イトーヨーカ堂の第1四半期(25年3~5月)業績は、既存店売上高の伸長と販管費の抑制により収益が大幅に改善した。店舗閉鎖の影響で売上高は前年比10%減1,746億円、営業総利益は6%減670億円だったものの、既存店売上高は1%増、既存店営業総利益が3%増に対し既存店販管費は5%減とし、営業利益は前年比60億円増の54億円と大幅な増益で、前年の営業赤字から黒字を回復した。

山本社長は「この2年間の成果が出ていると実感している。一番大きなポイントはピースデリで、我々が持っていなかったインフラを立ち上げ、これが食の強化に大きな大きく寄与した」と話す。

24年度上期、ピースデリのアイテム数は39SKU、惣菜内での売上構成比は10.9%だったが、25年7月は構成比が24.2%に上昇。
今期25年2月期はアイテム数69SKU、売上構成比30%を計画する。また、粗利率が改善し、第1四半期の粗利額は惣菜部合計で前年比3%増、冷惣菜部門で8%増、生産性も22年度比で3%改善した。「(ピースデリにより惣菜の)アウトバックとインストアのバランスをしっかりとることによって改善できた。従来はインストアのみで、人手の数が売上になっていたものが、機会ロスを大きく減らすことができたと同時に、インストアでの作業はできたての付加価値が高い商品に注力できることになり、お客様においしさなどの価値を伝えられるようになったことが最大のプラス効果だと思う」(山本社長)という。

近年の同社の業績を振り返ると、第1四半期での営業利益54億円は、2010年以降の過去16年間で東日本大震災があった2011年の55億円に次ぐ高い水準となった(2010年以降の営業利益3位は2014年の29億円で、営業利益20億円超は16年間で今回含め6回のみ)。山本社長は「これまでの残念ながらトップライン(売上高)が上がらない中で経費をコントロールして何とか利益を出していた企業体質から、トップラインを上げることによって利益が出せる体質になったことが大きく異なる点だと思う。過去20年間、ずっと右肩下がりと言われてきたが、私としても入社して初めてトップラインが上がり、利益が計画・前年を大きく上回るという形ができた」と感慨深く語った。

また、引き続き既存店の活性化を実施しながら、3日に東京・金町に出店した「ヨークフーズMARK IS 葛飾かなまち店」のような食品スーパーの出店を行い、最終的には首都圏の地域でドミナンスナンバーワンを目指していくなど話した。

〈冷食日報2025年9月5日付〉
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