ポッカサッポロフード&ビバレッジは9月8日、国産レモンの生産振興を目指す農業法人「株式会社LEMONITY(レモニティ)」を、鈴生(静岡市)、西本Wismettacホールディングスと共同で9月3日に設立したと発表した。本社は静岡市、資本金1億円。
生産拠点は広島県江田島市と静岡県磐田市で、初年度は約10haから着手する。出資比率は非開示。鈴生が運営し、ポッカサッポロと西本Wismettacが同額出資している。社名は“LEMON+TRINITY(三位一体)”に由来する。
栽培計画は2028年30ha、2030年50ha、2035年に100ha。収量は1ha当たり約30tを想定し、2035年に約3000t体制を目標とする。収穫されたレモンは青果60%、加工用40%に配分し、加工用は年約1200tをポッカサッポロが調達、青果は西本Wismettacの流通網で外食・小売に供給する見込み。
LEMONITY社は、生産~選果~販売(青果)~加工(果汁等)~物流をあらかじめ連結した運用設計が特徴だ。販売先が確実にあることで、生産者の在庫・価格リスクを抑え、面的拡大と新規参入を後押しする。

LEMONITY社の企業ロゴ
LEMONITY社長で、鈴生の社長でもある鈴木貴博氏は、「果樹は投資回収が長期で販売先の不確実性が拡大する上での壁だった」とし、青果と加工の出口を事前に設計し、生産側が〝作ることに専念できる環境〟を整えることで拡大の障壁を下げる考えを示した。また、温暖化で適地が北上している点に加え、ミカンなどに比べ糖度が求められないなど、栽培管理がしやすいレモンで契約栽培の一歩先を目指すとしている。
西本Wismettacホールディングスの新開裕之COOは、輸入と国産を組み合わせて需給を平準化し、世界産地の知見を上流(生産・選果)に活用して国産レモンの安定供給体制を構築する考えを示した。
アグリ事業は、中間流通から垂直統合型への転換を目指し、レモン以外の生産事業にも取り組む考え。
ポッカサッポロフード&ビバレッジの佐藤雅志社長は、「1957年のポッカレモン発売以来の知見を基盤に、果汁中心から〝レモンまるごと〟へ価値領域を拡張していく。市場活性による経済的価値(安定供給に根差した商品開発・ブランド価値の向上)と、産地振興・地域雇用・耕作放棄地の活用といった社会的価値の両立を図る」との考えを示した。
需要面では、健康価値や機能性への評価を背景に市場は拡大傾向にあり、既存主力品の出荷の伸長が続く一方、国産は供給制約が課題であり、安定供給体制の確立が不可欠との認識を示した。サプライチェーンを一体で設計することで計画的な投資と需要の見通しを確保し、生産者が安心して面を拡大できる環境を整えたい、としている。

レモンの収穫の様子
また、「互いに何を期待するか」との問いには、鈴生の鈴木社長が「売り先を確実にしたうえで生産に専念できる環境が拡大の鍵」と述べ、西本Wismettacホールディングスの新開COOが、「鈴生の生産ノウハウとポッカサッポロの加工力の組み合わせで、青果用と加工用を有効活用できる体制への期待」を表明した。ポッカサッポロの佐藤社長は、「農作物を生産実績のある鈴生と、青果市場をけん引する西本Wismettacの流通網により、生産から販売まで一体で回る安心感が生産拡大を後押しする」と語った。
LEMONITY社は、未来像として「世界に誇れるバリューチェーン一体型果樹モデルの確立」を掲げている。
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