ハチミツ酒「ミード」はヨーロッパを中心に古くから親しまれてきた伝統酒で、世界最古のお酒ともいわれる。日本でのミード文化の普及に情熱を注いでいるのが、金市商店(京都市中京区)三代目の市川拓三郎社長だ。
輸入品に加え、国産ハチミツを原料に自社醸造した「The MEAD(ザ・ミード)」シリーズを展開。4月には大阪・関西万博のORA外食パビリオン「宴~UTAGE~」で試飲を実施し、高い評価を得た。
1930年創業の金市商店は、国内外の養蜂家からハチミツを仕入れ、商品開発と製造を行い、全国のスーパーや百貨店に製品を届けている。1998年にはハチミツ専門店「ミールミィ」の運営を始め、現在は3店舗を展開。三条本店(京都市中京区)には常時100種以上のハチミツが並び、日本や世界各国のミードも揃える。仕入れは“ハニーハンター”の市川社長が自ら日本各地や世界中の養蜂家を訪ね、安心・安全な高品質のハチミツを直接買い付けることが強みだ。

金市商店 市川拓三郎社長
同社は2005年にミードの輸入を開始。2017年からは京都・城陽酒造への委託醸造により国内ミードの取り扱いを始めた。さらに2024年3月には京町家を改装し、地下鉄丸太町駅近くにミード専門ブリュワリー「京都蜂蜜酒醸造所」を開設。自社ブランド「The MEAD」の展開をスタートさせ、ラインアップを広げている。
ミードはハチミツに酵母と水を加えて発酵させた醸造酒で、甘口から辛口まで幅広い。使用するハチミツによって風味が異なり、個性豊かな味わいを楽しめる。
アルコール度数は一般的に10~16%だが、金市商店では「あまりお酒を飲まない人にも楽しんでほしい」と7~8%の低アルコール・甘口に仕上げている。
ミードはアルコールに弱い人や普段お酒を飲まない人に好まれるほか、「ハリーポッター」や異世界転生系作品の影響もあって、中世文化やファンタジーを好む若者やマニア層にも支持が広がっている。京都蜂蜜酒醸造所にはサロンを併設し、イベントやセミナーを通じてミードの魅力を体感できる場を提供している。
商品開発にあたっては「ハチミツ屋として、100種以上のハチミツから原料や種類をセレクトできるのが圧倒的な強み」と力を込める。9月には国産栗ハチミツを贅沢に使った新商品「The MEAD くり」を発売した。

「The MEAD くり(ザ・ミード クリ)」
「今後は発泡タイプなどを作れるとおもしろい。ビールの代わりに日常的に飲めるようになる」とアイデアを膨らませる。さらに「ミードを20歳になったときの“初めてのお酒”として提案し、より身近な存在にしていきたい」と目を輝かせる。
〈食品産業新聞2025年9月25日付〉コラム「元気企業 #237」
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