焦げくさい街の光が ペットボトルで砕け散る
違う命が揺れている
今 煙の中で 溶けあいながら 探しつづける愛のことば
もうこれ以上 進めなくても 探し続ける愛のことば
ロックバンド・スピッツのアルバム『ハチミツ』(1995年9月20日)に収録された『愛のことば』(作詞作曲・草野正宗)の一節だ。歌詞の解釈は様々だが、ヒット曲における「ペットボトル」の用例としてはかなり早い部類に入るはずだ。
この曲の発表からおよそ半年後の1996年4月1日、(社)全国清涼飲料工業会(当時)は小型PETボトルの製造販売の自主規制を終了。この日を境に500ml・350mlサイズのPETボトルの清涼飲料がコンビニや自販機の棚を彩るようになった。
同日には国内初のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」がサービスを開始。前年に青島幸男・東京都知事(当時)が世界都市博覧会の中止を決定した余波で、東京・晴海にオープンした東京ビッグサイト(東京国際展示場)は静かな初日を迎えていた。
日本でPETボトル入りの清涼飲料が発売されたのは1982年2月のこと。翌1983年には「コカ・コーラ」の1.5リットルサイズが全国発売されている。ガラス瓶やカンに比べて軽量で運搬が容易、落としても割れにくく再栓も可能なPETボトルは、清涼飲料、特に炭酸飲料の容器として最適だった。
だがポイ捨てや廃棄物の発生を懸念する声を受け、長らく業界は1リットル未満サイズのPETボトルでの清涼飲料の製造を自主規制してきた。当時はリサイクルのインフラも未発達で、自治体による回収も実施されていなかった。
いっぽうで1986年からはカルピス(当時)が「エビアン」を、サントリーフーズ(当時)が「ボルヴィック」の国内販売をスタート。自主規制の対象外だった海外ブランドの小型のPETボトル製品は少しずつだが輸入されはじめた。
風向きが変わったのは1993年。
翌1994年には記録的な猛暑と水不足を受けミネラルウォーターの需要が急拡大。「エビアン」に続けとばかりに大塚ベバレジ(当時)が「クリスタルガイザー」を、ネスレ日本が「コントレックス」「ヴィッテル」「ペリエ」を日本で本格展開し、ミネラルウォーターの輸入量は前年比で倍増。国内における輸入ブランドのシェアは四分の一を超えた。この年、戦後初めて1ドル=100円を割り込んだ円高も追い風だった。
こうなると世界各地から多種多様なPETボトルが集まってくることになる。色も組成も異なるPETボトルでは、たとえ回収してもリサイクルが難しくなる。業界は通産省(当時)などの指導のもと「PETボトル用自主設計ガイドライン」を策定し(1992年10月)規格標準化を目指すとともに、PETボトルリサイクル推進協議会(1993年6月)を通じてリサイクル体制の確立を急いだ。
1995年には自治体によるPETボトルの分別回収が本格的にスタートし、6月には容器包装リサイクル法(容リ法)が成立。
こうした経緯を経て翌1996年、ようやく小型PETボトルの製造販売が“解禁”されるに至った。この頃発売された「桃の天然水」(JT)「mistio」(ダイドー)「サプリ」(キリンビバレッジ)といった製品は当初カン入りをメインとしていたが、のちに小型PETボトル容器をメインに訴求することで大ヒット商品へと成長した。小型PETボトルを持ち歩くことは、”目新しいファッション”から”日常の風景”へと変化していった。
小型PETボトルの普及と、回収・リサイクル体制の確立から30年が経った。国内の指定PETボトルのリサイクル率は現在85.1%(2024年度。PETボトルリサイクル推進協議会)。しばしば誤解されているが、回収されたPETボトルの多くは衣類等に使用される繊維や建築現場等で使用されるブルーシート、あるいは再び飲料用のPETボトルにリサイクルされており、熱利用(サーマルリサイクル)や埋め立てへの使用は認められていない。
サントリー、コカ・コーラ、アサヒ飲料、キリンをはじめとした国内大手はPETボトルを再びPETボトルにリサイクルする”ボトルtoボトル”に力を入れており、現在その割合は37.7%(2024年度)にまで拡大している。
2026年に入ってからも大塚製薬が「ポカリスエット」などペットボトル飲料製品の9割以上(本数ベース)をリサイクルPET素材100%のボトルに変更することを発表。またネスレ日本も同年3月上旬より年間約3億本販売される「ネスカフェ ボトルコーヒー」シリーズのボトルを同じくリサイクルPET素材100%に切り替えた。
まずカタチから入り、いつしか日常生活に定着し、独自の進化を遂げる。
だが足元では原油価格がかつてない高騰を見せており、日本国内での資源循環は今後、環境配慮や企業イメージの面だけでなく、安定調達やコストの観点からもより重要な意味を持つ可能性がある。
予測不能な国際情勢や複雑な利害関係を乗り越え、サステナブルな道を”もうこれ以上、進めなくても、探し続ける”企業努力を引き続き見守り続けたい。
【岸田林(きしだ・りん)】









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