全宅連・全宅保証協会では、9月23日を「不動産の日」と定めているが、全国の20歳~65歳の男女5000名を対象に「住まいに関する定点/意識調査」を実施し、不動産の日に「2025年 住宅居住白書」として公開した。今回公開した調査結果(2025年7月30日~8月4日に実施)を見ると、買い時について揺れている消費者の様子が見てとれる。

【今週の住活トピック】
「2025年 住宅居住白書」公開/全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)・全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証協会)

不動産の買い時かどうか、揺れる消費者心理

「いま、不動産は買い時だと思いますか?」(単一回答)と聞いたところ、「買い時だと思う」が20.8%、「買い時だと思わない」が34.7%、「わからない」が44.5%となった。買い時かどうかわからない人が最も多いが、買い時と思う人、思わない人も相当数いる。

経年推移を見ると、「買い時だと思う」という回答は、コロナ禍で消費が落ち込んだ2021年~2022年には急減したが、住宅価格の高騰が続くなか、増加を続けている。一方、新築マンションの平均価格の上昇率が高かった2023年(首都圏で対前年28.8%の伸び:不動産経済研究所)には、「買い時だと思わない」が急増したが、以降は微減となっている。

住宅購入「買い時か否かわからない」が44.5%に。金利上昇と高すぎる価格に揺れる消費者意識とは

いま、不動産は買い時だと思うか?(単一回答)(出典:全宅連・全宅保証協会「2025年 住宅居住白書」より転載)

「買い時だ」VS「買い時でない」それぞれの理由

では、「買い時だ」「買い時でない」と思った理由はなんだろう?

買い時だと思う理由は、44.4%が「今後、住宅ローンの金利が上昇しそうなので」を挙げた。逆に買い時だと思わない理由を見ると、2025年調査で新設された「価格が高騰しすぎて手が届かないから」が49.3%に達した。住宅ローンの金利上昇や高すぎる住宅価格が、買い時観に大きく影響していることがわかる。

また、買い時だと思う理由3位の「不動産価格が安定または上昇しそうだから」(21.7%)と、買い時だと思わない理由3位の「不動産価格が下落しそうだから」(14.2%)に注目すると、不動産価格が今後は上昇または横ばいとみるか下落とみるかで、買い時観が変わることも見て取れる。

住宅購入「買い時か否かわからない」が44.5%に。金利上昇と高すぎる価格に揺れる消費者意識とは

「買い時だと思う」「買い時だと思わない」の理由(単一回答)(出典:全宅連・全宅保証協会「2025年 住宅居住白書」より転載)

また、買い時理由2位、買い時でない理由4位に挙げられた「住宅ローン減税などの税制優遇制度」だが、多くの税制優遇制度が期限切れを迎える。国土交通省や業界団体などは、期限切れの税制優遇制度の延長や住宅ローン減税の見直しを要望している。税制優遇制度などが今後どうなるかも、注目したい点だ。

持ち家派は減少だが賃貸派が増えたわけではない

では、買う、つまり持ち家志向についてはどうだろう?「現在の住まいに関係なく、持ち家派か、賃貸派のどちらか」を聞いた結果の経年推移を見ていこう。

持ち家派(マンション・一戸建て)は依然多いものの、減少傾向にある。では、賃貸派(マンション・一戸建て)が増えているのかというと、そういうわけでもない。つまり「どちらともいえない/あてはまるものがない」の回答が増えているわけだ。

住宅購入「買い時か否かわからない」が44.5%に。金利上昇と高すぎる価格に揺れる消費者意識とは

「持ち家派」「賃貸派」どちらか?(単一回答)過去の調査結果との比較(出典:全宅連・全宅保証協会「2025年 住宅居住白書」より転載)

住宅価格も家賃も上昇している現状では、判断がつかないという背景もあるだろうが、若い世代を中心に、そのときのライフスタイルにもっとも適した“最適化”の住まいを選ぶという考え方が広がっていることも影響しているのだろう。また、二拠点居住への関心も高く、その場合は持ち家と賃貸を組み合わせる事例もあり、単に持ち家か賃貸かだけに収まらない場合もあるかもしれない。

ちなみに、「現在の居住形態」を聞いた結果は、「持ち家(マンション・集合住宅)」16.4%、「持ち家(一戸建て)」47.6%、「賃貸(マンション・集合住宅)」29.7%、「賃貸(一戸建て)」3.8%という構成だった。

天災に対する意識は高いが、ハザードマップのチェックは…?

さて、最近は地球温暖化の影響もあって甚大な水害が増えているほか、巨大地震へのリスクも高まっている。天災に対する住まいの意識を聞くと、ハザードマップなどへの意識や、建物の耐震性や地盤などへの意識が高いことがわかる。

住宅購入「買い時か否かわからない」が44.5%に。金利上昇と高すぎる価格に揺れる消費者意識とは

天災に対する住まいの意識(3つまで選択)(出典:全宅連・全宅保証協会「2025年 住宅居住白書」より転載)

ただし、「ハザードマップについてどの程度知っているか」という質問には、「住んでいる地域のハザードマップを見たことがある」という望ましい回答は54.1%に達する一方で、「聞いたことがない」(8.6%)、「聞いたことはあるがどんなものか知らない」(11.7%)、「どんなものか知っているが、住んでいる地域のハザードマップを見たことがない」(25.5%)といった人も多い。

日本はデフレが長期間続き、住宅ローンの金利が低金利のままだった時期を経て、物価が上昇するタイミングに入った。人手不足による値上げや天災の甚大化などの新たな課題もあり、住まい選びも難しくなっている。こうした時期には、リスクを慎重に判断するとともに、無理のない身の丈に合った選び方をすることが大切になるだろう。

●関連サイト
【全宅連・全宅保証】不動産の日アンケート調査結果『2025年住宅居住白書』公表

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